古典ライブラリー

万葉集 巻第四 662番

阿胡の山

市原王(いちはらのおおきみ)

阿胡の山が幾重にも隠している佐堤の崎で、小網を張っていたあの子が、夢に見える。旅先で見かけた娘を思う市原王の歌。

山の重なる入り江の崎で、娘が小さな網を張って魚をとっている

題詞市原王の歌一首

  1. 1阿胡あご阿胡あごあごののの山やま山やまやま網兒之山
  2. 2五い五いい百ほ百ほほ重へ重へへ隱かく隱かくかくせせせるるる五百重隱有
  3. 3佐堤さて佐堤さてさてののの埼さき埼さきさき佐堤乃埼
  4. 4小さ小ささ網で網でで延は延ははへへへししし子こ子ここががが左手蠅師子之
  5. 5夢いめ夢いめいめにににししし見み見みみゆるゆるゆる夢二四所見

引用の仕方

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現代語訳

阿胡の山が幾重にも隠している佐堤の崎で、小網を張っていたあの子が、夢に見える。

意訳

旅の途中、山々に囲まれた入り江の崎で、網を張って働く娘を見かけた。その姿が忘れられず、夢にまで見たと歌う。

語釈・文法注

文法・本文

小網
「さで」は柄のついた小さな網。

和歌

作者
市原王(生没年未詳)
天智天皇の曾孫で、安貴王の子。大伴家持と親しかった。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・662番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
市原王の歌。阿胡の山・佐堤の崎は、志摩国(三重県)とみられる。

解説

地名を重ねて、遠い海辺の情景を浮かび上がらせている。原文の「左手」は「さで」と読ませる戯書。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、169頁(コマ88)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、180頁(コマ96)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日