古典ライブラリー

万葉集 巻第三 412番

頂に

市原王(いちはらのおおきみ)

頭の上に束ねてつける玉は、二つとない大切なものです。それをどうなさろうと、あなたのお心のままに。かけがえのない娘を、相手の心に委ねる歌。

髪を高く結い上げ、頭上に一つの美しい玉を飾った若い女性

題詞市原王の歌一首

  1. 1頂いなだき頂いなだきいなだきににに伊奈太吉爾
  2. 2著統きす著統きすきすめめめるるる玉たま玉たまたまははは伎須賣流玉者
  3. 3二ふた二ふたふたつつつ無な無ななししし無二
  4. 4こなたこなたこなたかなたかなたかなたももも此方彼方毛
  5. 5君きみ君きみきみがががまにまにまにまにまにまに君之隨意

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

頭の上に束ねてつける玉は、二つとないものです。こうなさろうとああなさろうと、あなたのお心のままに。

意訳

頭上の髻(もとどり)に飾る玉は、ただ一つの大切な宝である。その玉にたとえた娘を、どのようにされようとあなたのお心のままです、と相手に委ねている。娘を嫁がせる親の立場の歌とも、恋人に身を任せる女の立場の歌とも読める。

語釈・文法注

文法・本文

著統める
「きすむ」は束ねて納める、大切にしまう。
君がまにまに
あなたの思うままに。

和歌

作者
市原王(生没年未詳)
天智天皇の曾孫で、安貴王の子。写経所の長官などを務め、大伴家持と親しかった。
出典
『万葉集』巻第三・譬喩歌・412番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
市原王の譬喩歌。

修辞

譬喩
頭上の玉に、大切な人をたとえる。

解説

頭上の玉は、仏典の「髻中の明珠」の話をふまえたものとみる説がある。市原王は写経所にかかわった人で、仏典に親しんでいた。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、116頁(コマ62)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、118頁(コマ65)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日