古典ライブラリー

万葉集 巻第三 441番

大皇の 命恐み

倉橋部女王(くらはしべのおおきみ)

天皇のご命令を恐れ慎んで、まだ殯の時でもないのに、雲に隠れておしまいになった。謀反の疑いで自害した長屋王を悼む歌。

曇り空の下、立派な邸宅の門が閉ざされ、その前で女性が雲を見上げている

題詞神龜六年己巳、左大臣長屋王に死を賜ひし後、倉橋部女王の作れる歌

  1. 1大おほ大おほおお皇きみ皇きみきみののの太皇之
  2. 2命みこと命みことみこと恐かしこ恐かしこかしこみみみ命恐
  3. 3大おほ大おほおお殯あらき殯あらきあらきののの大荒城乃
  4. 4時とき時ときときにににはははあらあらあらねねねどどど時爾波不有跡
  5. 5雲くも雲くもくもがくりがくりがくりますますます雲隱座

引用の仕方

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現代語訳

天皇のご命令を恐れ慎んで、まだ殯をする時でもないのに、雲に隠れておしまいになった。

意訳

神亀6年(729)、左大臣長屋王は謀反の疑いをかけられ、天皇の命によって自害した(長屋王の変)。まだ死ぬ時ではないのに、天皇の命令に従って亡くなったと、倉橋部女王は王の無念を思いやる。表立って悲しみを言えない事件の中で、ひそかに詠まれた挽歌である。

語釈・文法注

文法・本文

大殯
「おほあらき」は、貴人を葬るまでの間、遺体を安置して祭ること。
雲がくります
貴人の死をいう。

和歌

作者
倉橋部女王(生没年未詳)
伝未詳の女王。
出典
『万葉集』巻第三・挽歌・441番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
神亀6年(729)、左大臣長屋王が死を賜った後に、倉橋部女王が詠んだ歌。

解説

長屋王の変は、藤原氏の勢力拡大のための陰謀とされ、のちに王の無実がほのめかされている。この歌は「命恐み」と言いながら、時ならぬ死への無念をにじませている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、121頁(コマ64)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、124頁(コマ68)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日