古典ライブラリー

万葉集 巻第三 413番

須磨の海人の

大網人主(おおあみのひとぬし)

須磨の海人の塩焼き衣の藤の着物は、目が粗いように、たまにしか着ないので、まだ着なれていない。めったに逢えない恋人を、着なれない衣にたとえた宴の歌。

須磨の浜辺で塩を焼く海人の、藤の繊維で織った粗い衣が干されている

題詞大網公人主、宴に吟へる歌一首

  1. 1須磨すま須磨すますまののの海あ海ああ人ま人ままののの須麻乃海人之
  2. 2鹽しほ鹽しほしお燒やき燒やきやき衣ぎぬ衣ぎぬぎぬののの鹽燒衣乃
  3. 3藤ふぢ藤ふぢふじ服ごろも服ごろもごろも藤服
  4. 4間ま間まま遠どほ遠どほどおくくくしししあれあれあればばば間遠之有者
  5. 5未いま未いまいまだだだ著き著きき穢な穢ななれれれずずず未著穢

引用の仕方

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現代語訳

須磨の海人が塩を焼くときに着る藤の衣は、織り目が粗いように、間遠にしか着ないので、まだ着なれていない。

意訳

藤の繊維で織った塩焼き衣は、織り目が粗い。その「間遠(まどほ)」という言葉にかけて、たまにしか逢わないので、まだ相手になじんでいない、と恋人との仲を歌う。宴の席で口ずさまれた、古くからの歌であろう。

語釈・文法注

文法・本文

藤服
藤づるの繊維で織った粗末な衣。
間遠
織り目が粗いことと、逢う間が遠いことをかける。

和歌

作者
大網人主(生没年未詳)
伝未詳。公は姓。
出典
『万葉集』巻第三・譬喩歌・413番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
大網人主が宴の席で口ずさんだ歌。

修辞

掛詞
「間遠」に、織り目が粗いことと、逢うことがまれなことをかける。
序詞
「須磨の海人の鹽燒衣の藤服」が「間遠」を導く。

解説

題詞に「吟へる」とあり、自作ではなく古歌を宴で歌ったものとみられる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、116頁(コマ62)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、119頁(コマ65)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日