古典ライブラリー

万葉集 巻第三 410番

橘を 屋前に植ゑ生し

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

橘を庭に植えて育て、立ったり座ったりして気をもんでも、後で悔やんでも何のかいもないでしょう。娘の縁談をめぐって、坂上郎女が駿河麻呂に答えたとされる歌。

屋敷の庭に植えられた若い橘の木を、年配の女性が心配そうに見つめている

題詞大伴坂上郎女の橘の歌一首

  1. 1橘たちばな橘たちばなたちばなををを橘乎
  2. 2屋前には屋前にはにはににに植う植ううゑゑえ生おほ生おほおおししし屋前爾殖生
  3. 3立た立たたちちちててて居ゐ居ゐいててて立而居而
  4. 4後のち後のちのちににに悔く悔くくゆゆゆともともとも後雖悔
  5. 5驗しるし驗しるししるしあらあらあらめめめやもやもやも驗將有八方

引用の仕方

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現代語訳

橘を庭に植えて育て、立ったり座ったりして気をもんで、後になって悔やんでも、何のかいがあるでしょうか。

意訳

庭に植えて大切に育てた橘は、坂上郎女の娘のたとえである。手塩にかけて育てた娘を、後になって悔やむような相手に嫁がせても仕方がないと、縁談に慎重な母の思いを歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

立ちて居て
立ったり座ったりして。落ち着かず気をもむさま。
驗あらめやも
反語。何のかいがあろうか。

和歌

作者
大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。大伴家の家刀自として一族の祭祀を担い、万葉集の女性歌人のうち最も多くの歌を残した。
出典
『万葉集』巻第三・譬喩歌・410番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
大伴坂上郎女が、橘を詠んだ譬喩歌。次の411番がこれに答えている。

修辞

譬喩
橘に娘をたとえる。

解説

次の411番の和ふる歌は、作者を記さないが、駿河麻呂の歌とみるのが一般的である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、116頁(コマ62)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、118頁(コマ65)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日