古典ライブラリー

万葉集 巻第三 394番

標結ひて

余明軍(よのみょうぐん)

しるしを結んで私が自分のものと決めておいた住吉の浜の小松は、この先も私の松だ。小松にたとえて、思いを寄せる若い女性を誰にも渡さないと歌う。

浜辺の若い松の幹に、白い縄が結びつけられている。波打ちぎわから男がそれを見守っている

題詞余明軍の歌一首

  1. 1標しめ標しめしめ結ゆ結ゆゆひひいててて印結而
  2. 2我わ我わわががが定さだ定さださだめめめてててししし我定義之
  3. 3住吉すみのえ住吉すみのえすみのえののの住吉乃
  4. 4濱はま濱はまはまののの小こ小ここ松まつ松まつまつははは濱乃小松者
  5. 5後のち後のちのちももも吾わ吾わわががが松まつ松まつまつ後毛吾松

引用の仕方

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現代語訳

しるしの縄を結んで、私が自分のものと決めておいた住吉の浜の小松は、この先もずっと私の松だ。

意訳

住吉の浜の若い松に、自分のものだというしるしの縄を結んでおいた。この小松は、これからもずっと自分のものだ。小松は年若い女性のたとえで、早くから心に決めた人を、誰にも渡さないという強い思いを歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

標結ふ
自分のものであることを示すために縄などを張る。恋の歌では、相手を自分のものと決めることのたとえ。
定義之
「さだめてし」と読む。「義」は字音を借りた書き方。

和歌

作者
余明軍(生没年未詳)
百済系の渡来人で、大伴旅人に仕えた資人(従者)。旅人の死を悼む歌も残した。
出典
『万葉集』巻第三・譬喩歌・394番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
余明軍の譬喩歌。

修辞

譬喩
小松に年若い女性をたとえる。
反復
「我が定めてし」「吾が松」と、自分のものであることをくり返す。

解説

「標結ふ」は、領有を示す古い習俗にもとづく表現で、恋の歌でよく使われる。続く笠女郎や坂上郎女の歌でも、同じ表現が恋のたとえとして用いられている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、114頁(コマ61)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、116頁(コマ64)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日