古典ライブラリー

万葉集 巻第三 392番

ぬばたまの その夜の梅を

大伴百代(おおとものももよ)

あの夜の梅を、うっかり忘れて手折らずに帰ってきてしまった。手折ろうと思っていたのに。梅にたとえて、逢う機会を逃した女性への思いを歌う。

夜の庭に白梅が咲き、その下を、振り返りながら男が帰っていく

題詞太宰大監大伴宿禰百代の梅の歌一首

  1. 1ぬばたまぬばたまぬばたまののの烏珠之
  2. 2そのそのその夜よ夜よよののの梅うめ梅うめうめををを其夜乃梅乎
  3. 3たたた忘わす忘わすわすれれれててて手忘而
  4. 4折を折をおらららずずず來き來ききにににけりけりけり不折來家里
  5. 5思おも思おもおもひひいしししものものものををを思之物乎

引用の仕方

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現代語訳

(ぬばたまの)あの夜の梅を、うっかり忘れて手折らずに帰ってきてしまった。手折ろうと思っていたのに。

意訳

あの夜、梅の花を手折ろうと思っていたのに、うっかり忘れて帰ってきてしまった。梅の花は女性のたとえで、せっかくの機会に思いを打ち明けられなかった悔しさを歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

た忘れて
「た」は接頭語。うっかり忘れて。

和歌

作者
大伴百代(生没年未詳)
大宰大監として大伴旅人のもとに仕え、梅花の宴にも加わった。
出典
『万葉集』巻第三・譬喩歌・392番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大宰大監の大伴百代が、梅を詠んだ譬喩歌。

修辞

譬喩
梅の花に女性をたとえ、「折る」に思いを遂げることを重ねる。

解説

大伴百代は、巻第五の梅花の宴(天平2年、730)の歌の作者の一人でもある。大宰府では梅が好んで詠まれた。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、113頁(コマ60)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、115頁(コマ63)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日