古典ライブラリー

万葉集 巻第三 378番

昔者の 舊き堤は

山部赤人(やまべのあかひと)

昔の古い池の堤は、年を経て、池の水際に水草が生い茂っている。亡き藤原不比等の邸宅の庭の池を見て、時の流れを感じた赤人の歌。

古びた屋敷の庭の池の水際に水草が茂り、苔むした堤が静かに水面に映っている

題詞山部宿禰赤人、故太政大臣藤原家の山池を詠める歌一首

  1. 1昔いにしへ昔いにしへいにしえ者の者ののののの昔者之
  2. 2舊ふる舊ふるふるききき堤つつみ堤つつみつつみははは舊堤者
  3. 3年とし年としとし深ふか深ふかふかみみみ年深
  4. 4池いけ池いけいけののの渚なぎさ渚なぎさなぎさににに池之瀲爾
  5. 5水み水みみ草くさ草くさくさ生お生おおひひいにににけりけりけり水草生家里

引用の仕方

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現代語訳

昔の古い堤は、年を重ねたので、池の水際に水草が生い茂っている。

意訳

亡き太政大臣藤原不比等の邸宅の庭の池は、主を失って年月がたち、水際には水草が生い茂っている。荒れたとは言わずに、水草の茂るさまだけを描いて、過ぎた年月と主のいない寂しさを伝えている。

語釈・文法注

文法・本文

年深み
年月が深いので、長い年月がたったので。

和歌

作者
山部赤人(生没年未詳)
聖武天皇の時代の宮廷歌人。自然の景色を清らかに描く叙景歌にすぐれ、のちに人麻呂とともに歌聖とたたえられた。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・378番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
山部赤人が、故太政大臣藤原不比等の邸宅の庭の池を詠んだ歌。

解説

藤原不比等は養老4年(720)に亡くなり、太政大臣を追贈された。その邸宅は、のちに娘の光明皇后によって法華寺となった。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、110頁(コマ59)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、112頁(コマ62)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日