古典ライブラリー

万葉集 巻第三 374番

雨零らば

石上乙麻呂(いそのかみのおとまろ)

雨が降ったらかぶろうと思っている笠の山よ、ほかの人にはかぶらせるな。たとえ濡れてびしょびしょになっても。笠の山に託して、恋人をほかの男に渡すなと歌う。

雨雲の迫る三笠山を背に、男が笠を手に取って空を見上げている

題詞石上乙麻呂朝臣の歌一首

  1. 1雨あめ雨あめあめ零ふ零ふふらららばばば雨零者
  2. 2蓋き蓋ききむむむととと念おも念おもおもへへえるるる將蓋跡念有
  3. 3笠かさ笠かさかさののの山やま山やまやま笠乃山
  4. 4人ひと人ひとひとにににななな蓋き蓋ききしめしめしめ人爾莫令蓋
  5. 5霑ぬ霑ぬぬれれれはははひづひづひずともともとも霑者漬跡裳

引用の仕方

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現代語訳

雨が降ったらかぶろうと思っている笠の山よ、ほかの人にはかぶらせるな。たとえ雨に濡れてびしょぬれになっても。

意訳

三笠山の「笠」にかけて、雨が降ったら自分がかぶろうと思っている笠だから、ほかの人にはかぶらせるなと歌う。笠は自分の思う女性のたとえで、ほかの男に心を許すなという、独占の思いをこめた歌と考えられる。

語釈・文法注

文法・本文

な蓋しめ
「な」は禁止。かぶらせるな。
霑れはひづとも
濡れてびしょぬれになっても。

和歌

作者
石上乙麻呂(?–750)
石上麻呂の子。越前守・丹波守などを務め、のちに中納言となった。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・374番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
石上乙麻呂の歌。

修辞

掛詞
三笠山の「笠」に、かぶる笠をかける。
譬喩
笠に恋人をたとえる。

解説

前の372・373番の赤人の歌と同じく三笠山を詠んでいるので、ここに並べられている。譬喩の歌として読むのが一般的である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、110頁(コマ59)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、112頁(コマ62)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日