古典ライブラリー

万葉集 巻第三 371番

飫宇の海の

門部王(かどべのおおきみ)

飫宇の海の河原の千鳥よ、お前が鳴くと、私の佐保川のことが思われてならない。出雲守として赴任した門部王が、千鳥の声に都を思った歌。

出雲の海に注ぐ川の河原で、千鳥が鳴きながら群れ飛び、それを見送る貴人の姿

題詞出雲守門部王、京を思ふ歌一首

  1. 1飫宇おう飫宇おうおうののの海うみ海うみうみののの飫海乃
  2. 2河かは河かはかわ原ら原ららののの千ち千ちち鳥どり鳥どりどり河原之乳鳥
  3. 3汝な汝ななががが鳴な鳴ななけけけばばば汝鳴者
  4. 4吾わ吾わわががが佐保さほ佐保さほさほ河がは河がはがわののの吾佐保河乃
  5. 5念おも念おもおもほほおゆゆゆらくらくらくににに所念國

引用の仕方

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現代語訳

飫宇の海の河原の千鳥よ、お前が鳴くと、私の佐保川のことが思われることよ。

意訳

出雲の国府のあった飫宇の海辺で、門部王は河原に鳴く千鳥の声を聞く。千鳥は都の佐保川の名物でもあった。同じ千鳥の声が、遠い都の家の近くを流れる佐保川を思い出させるのである。

語釈・文法注

文法・本文

念ほゆらくに
「念ほゆ」のク語法+「に」。思われることよ。

和歌

作者
門部王(?–745)
奈良時代の皇族で、のちに大原真人の姓を賜った。出雲守などを務めた。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・371番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
出雲守であった門部王が、都を思って詠んだ歌。

解説

飫宇の海は、出雲の国府に近い中海のあたりとされる。千鳥の声によって、遠い任地と都とが結ばれている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、109頁(コマ58)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、111頁(コマ61)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日