万葉集 巻第三 326番
見渡せば 明石の浦に
見わたすと、明石の浦にともす漁り火のように、はっきりと表に出てしまった。妻を恋しく思う気持ちが。難波で漁り火を見て妻を思った門部王の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞門部王、難波に在りて、漁父の燭光を見て作れる歌一首
現代語訳
見わたすと、明石の浦にともしている漁り火のように、はっきりと表に出てしまった。妻を恋しく思う気持ちが。
意訳
夜の海に赤々と燃える漁り火は、遠くからでもよく目立つ。門部王は、その漁り火のように、胸に秘めていた妻への恋しさが、隠しきれずに表に出てしまったと歌う。
語釈・文法注
文法・本文
- 秀に出づ
- 「秀(ほ)」は目立つところ。はっきりと表に現れる。
- 戀ふらく
- 「戀ふ」のク語法。恋しく思うこと。
和歌
- 作者
- 門部王(?–745)
奈良時代の皇族で、のちに大原真人の姓を賜った。出雲守などを務めた。 - 出典
- 『万葉集』巻第三・雑歌・326番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
- 状況
- 門部王が難波にいて、漁師の漁り火を見て詠んだ歌。
修辞
- 序詞
- 「見渡せば明石の浦にともす火の」が「秀にぞ出でぬる」を導く。
解説
漁り火の「火(ほ)」と「秀(ほ)」の音を重ねた序詞が巧みである。難波から明石の漁り火が見えるかどうかは疑問で、実景よりも言葉の連想を重んじた歌とみられる。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、104頁(コマ56)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、105頁(コマ58)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日