万葉集 巻第三 336番
しらぬひ 筑紫の綿は
筑紫の綿は、まだ身につけて着てみたことはないけれど、見るからに暖かそうだ。大宰府の特産の真綿を詠んだ沙弥満誓の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞沙彌滿誓、綿を詠める歌一首
現代語訳
(しらぬひ)筑紫の綿は、身につけて、まだ着てはみないけれど、暖かそうに見える。
意訳
筑紫は真綿(絹の綿)の産地として知られ、大宰府から毎年多くの綿が都へ送られた。満誓は、まだ着たことはないが、いかにも暖かそうだと、山と積まれた綿の白さと柔らかさをたたえている。綿に女性を重ねた戯れの歌とみる説もある。
語釈・文法注
文法・本文
- しらぬひ
- 「筑紫」にかかる枕詞。
- いまだは着ねど
- 「ね」は打消「ず」の已然形。まだ着てはいないが。
和歌
- 作者
- 沙弥満誓(生没年未詳)
俗名は笠麻呂。美濃守・右大弁などを務めた後に出家し、造筑紫観世音寺別当として大宰府に下った。大伴旅人らと交わった。 - 出典
- 『万葉集』巻第三・雑歌・336番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
- 状況
- 造筑紫観世音寺別当として大宰府にいた沙弥満誓が、筑紫の綿を詠んだ歌。
修辞
- 枕詞
- 「しらぬひ」が「筑紫」にかかる。
解説
続日本紀によれば、大宰府からは毎年十万屯もの綿が都へ送られていた。満誓は僧でありながら、大伴旅人を中心とする筑紫歌壇に加わり、軽妙な歌を残している。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、106頁(コマ57)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、106頁(コマ59)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日