古典ライブラリー

万葉集 巻第三 310番

ひむかしの 市の植木の

門部王(かどべのおおきみ)

東の市の並木の枝が垂れ下がるほど長い間逢わずにいたので、恋しく思うのももっともなことだ。都の市の並木を詠んで、久しく逢わない人への思いを歌う。

平城京の市の通りに、枝の垂れた大きな並木が続き、人々が行き交っている

題詞門部王、東の市の樹を詠めて作れる歌一首

  1. 1東ひむかし東ひむかしひむかしののの東
  2. 2市いち市いちいちののの植う植うう木ゑき木ゑきえきののの市之殖木乃
  3. 3木こ木ここ垂だ垂だだるるるまでまでまで木足左右
  4. 4逢あ逢ああははわずずず久ひさ久ひさひさしみしみしみ不相久美
  5. 5うべうべうべ戀こ戀ここひひいにににけりけりけり宇倍戀爾家利

引用の仕方

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現代語訳

東の市の並木の枝が垂れ下がるほどまで、長い間逢わずにいたので、恋しく思うのももっともなことだ。

意訳

平城京の東の市には、並木が植えられていた。植えたばかりの木が大きく育って枝を垂れるほど、長い間あの人に逢っていない。だから恋しくてたまらないのも当然だと、市の並木の成長に、逢えずにいた年月の長さを重ねている。

語釈・文法注

文法・本文

逢はず久しみ
「…み」は理由。逢わずに久しいので。
うべ
なるほど、もっともなことに。

和歌

作者
門部王(?–745)
奈良時代の皇族で、のちに大原真人の姓を賜った。出雲守などを務めた。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・310番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
門部王が、平城京の東の市の並木を詠んだ歌。

解説

平城京には東西に官営の市があり、並木が植えられていた。都の具体的な景物を詠んだ珍しい歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、101頁(コマ54)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、101頁(コマ56)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日