万葉集 巻第三 238番
大宮の 內まで聞ゆ
宮殿の中まで聞こえてくる。網を引こうと、網子たちを指図する漁師の呼び声が。天皇の命令に応えて、長意吉麻呂が難波の宮で詠んだ歌。
場面イラスト(準備中)
題詞長忌寸意吉麻呂、詔に應ずる歌一首
現代語訳
宮殿の中まで聞こえてくる。網を引くというので、網子たちを指図して整える、漁師の呼び声が。
意訳
難波の宮に滞在していた天皇の命令で、意吉麻呂はその場の情景を詠んだ。宮殿の奥まで響いてくる漁師たちの威勢のよい掛け声を、そのまま歌にしている。海辺の宮ならではの、にぎやかで新鮮な朝の光景が伝わってくる。
語釈・文法注
文法・本文
- 網子ととのふる
- 「網子」は網を引く人々。「ととのふ」は呼び集めて指図する。
和歌
- 作者
- 長意吉麻呂(生没年未詳)
持統・文武天皇の時代の歌人。行幸に従って歌を詠み、即興の物名歌にも長じた。 - 出典
- 『万葉集』巻第三・雑歌・238番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
- 状況
- 長意吉麻呂が、天皇の命令に応じて詠んだ歌。難波の宮での作とみられる。
修辞
- 倒置
- 「大宮の内まで聞ゆ」と言い切ってから、何が聞こえるのかを後に置く。
解説
宮廷の歌でありながら、働く漁民の声を主題にした珍しい歌である。結句の「海人の呼び聲」を最後に置く倒置によって、声の響きが印象に残る。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、91頁(コマ49)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、89頁(コマ50)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日