古今和歌集 巻第三 夏歌 167番
塵をだに
塵さえも置くまいと思って大切にしている。咲いた時から、妻と私が寝る「床」という名の常夏の花なのだから。

現代語訳
〔詞書〕隣の家から常夏(撫子)の花を所望してきたので、惜しんでこの歌を詠んで贈った歌。
塵さえも置くまいと思って大切にしている。咲いた時から、妻と私が寝る「床」という名の常夏の花なのだから。
意訳
撫子を所望されたが、妻と寝る床にちなむ大切な花だから、塵ひとつ置かずに守っている、と断る。
語釈・文法注
- 常夏
- 撫子の別名。
- 塵をだに据ゑじ
- 塵さえも置くまい。
- いもと我がぬる
- 妻と私が寝る。
和歌
- 作者
- 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 生没年未詳(九世紀末〜十世紀前半)
『古今和歌集』の撰者の一人。甲斐少目・和泉大掾など地方の下級官人を務めたが、歌才は宇多・醍醐両天皇に重んじられ、屏風歌や歌合で活躍した。貫之と並ぶ歌人とされる。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第三・夏歌・167番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「隣より常夏の花をこひにおこせたりければをしみてこの歌をよみて遣しける」(隣の家から常夏(撫子)の花を所望してきたので、惜しんでこの歌を詠んで贈った歌)。
修辞
- 掛詞
- 「常夏」の「とこ」に「床」をかける。
解説
躬恒の歌。花を惜しむ気持ちを、ユーモアをまじえた断り方で表した。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、30頁(コマ28)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日