古今和歌集 巻第二 春歌下 113番
花の色は
花の色はすっかり色あせてしまったなあ。むなしく、私がこの世で時を過ごし、長雨が降り続き、物思いにふけっていた間に。

現代語訳
花の色はすっかり色あせてしまったなあ。むなしく、私がこの世で時を過ごし、長雨が降り続き、物思いにふけっていた間に。
意訳
長雨の間に桜が色あせたことと、自分が物思いにふけるうちに若さや美しさが衰えたことを重ねる。花の移ろいと人の老いをひとつに詠んだ。
語釈・文法注
- うつりにけりな
- 色あせてしまったなあ。「な」は詠嘆。
- いたづらに
- むなしく。
- ふる
- 「経る(時を過ごす)」と「降る」。
- ながめ
- 「眺め(物思い)」と「長雨」。
和歌
- 作者
- 小野小町(おののこまち) 生没年未詳(九世紀中頃)
仁明・文徳天皇の頃の女性歌人。経歴はほとんどわからないが、仮名序は「あはれなるやうにてつよからず」と評し、恋の歌、ことに夢の歌に優れる。美女の伝説が多く生まれた。六歌仙・三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第二・春歌下・113番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 題しらず(詠まれた事情は伝わらない)。
修辞
- 掛詞
- 「ふる」に「経る」と「降る」、「ながめ」に「眺め」と「長雨」をかける。
- 倒置
- 「花の色は移りにけりな」を先に言う。
解説
小野小町の代表歌で、百人一首第九首にも採られている。二つの掛詞で自然と人事を重ねる技巧と、深い嘆きとが一体となっている。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、20頁(コマ23)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日