古今和歌集 巻第二 春歌下 91番
花の色は
花の色は霞の中に閉じこめて見せないとしても、せめて香だけでも盗んで運んでおくれ、春の山風よ。

現代語訳
〔詞書〕春の歌として詠んだ歌。
花の色は霞の中に閉じこめて見せないとしても、せめて香だけでも盗んで運んでおくれ、春の山風よ。
意訳
霞が花の色を隠すのならしかたがない。せめて山風よ、その香だけでも盗んで届けてほしい、と風に頼む。
語釈・文法注
- かすみにこめて
- 霞の中に閉じこめて。
- だに
- せめて…だけでも。
- ぬすめ
- 盗め。
和歌
- 作者
- 僧正遍昭(そうじょうへんじょう) 816–890
桓武天皇の孫で、俗名は良岑宗貞(よしみねのむねさだ)。仁明天皇に仕えて蔵人頭となったが、天皇の崩御を機に出家し、のちに僧正となって元慶寺・花山寺を開いた。素性法師の父。六歌仙・三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第二・春歌下・91番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「春の歌とてよめる」(春の歌として詠んだ歌)。
修辞
- 擬人法
- 山風に香を盗めと命じる。
解説
作者は出家前の良岑宗貞(のちの僧正遍昭)。「盗め」という意外な語の使い方がおもしろい。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、17頁(コマ22)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日