古今和歌集 巻第二 春歌下 89番
さくら花
桜の花を散らした風の名残として、水のない空に、波が立っていることだ。

現代語訳
〔詞書〕亭子院の歌合の歌。
桜の花を散らした風の名残として、水のない空に、波が立っていることだ。
意訳
風が吹き過ぎた後も、空には散った花びらが舞っている。その花びらを、水のない空に立つ波に見立てた。
語釈・文法注
- なごり
- 風が過ぎた後に残るもの。もとは波の余波(なごり)の意もある。
- 水なき空に波ぞ立ちける
- 空に舞う花を波に見立てる。
和歌
- 作者
- 紀貫之(きのつらゆき) 872?–945?
『古今和歌集』の撰者の中心で、仮名序を書いた。御書所預などを経て土佐守となり、任期を終えて帰京する旅を『土佐日記』に書いた。理知的で技巧に富む歌風で、『古今和歌集』に最も多い百首あまりが入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第二・春歌下・89番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「亭子院の歌合の歌」(亭子院の歌合の歌)。
修辞
- 見立て
- 空に舞う花びらを波に見立てる。
- 掛詞
- 「なごり」に「余波」をひびかせる。
解説
紀貫之の代表作の一つ。空を海に、花を波に見立てる大胆な発想が評価されてきた。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、16頁(コマ21)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日