古今和歌集 巻第二 春歌下 82番
ことならば
同じことなら、いっそ咲かずにいてくれないか、桜の花よ。散るのを見ている私までも、落ち着いた心がない。

現代語訳
〔詞書〕桜の花が散ったのを詠んだ歌。
同じことなら、いっそ咲かずにいてくれないか、桜の花よ。散るのを見ている私までも、落ち着いた心がない。
意訳
どうせ散るのなら初めから咲かないでほしい。散る桜を見る自分の心まで落ち着かない、と桜への屈折した愛情を詠む。
語釈・文法注
- ことならば
- 同じことなら、どうせなら。
- 咲かずやはあらぬ
- 「やは」は反語で願望を表す。咲かずにいてくれないか。
- しづ心
- 落ち着いた心。
和歌
- 作者
- 紀貫之(きのつらゆき) 872?–945?
『古今和歌集』の撰者の中心で、仮名序を書いた。御書所預などを経て土佐守となり、任期を終えて帰京する旅を『土佐日記』に書いた。理知的で技巧に富む歌風で、『古今和歌集』に最も多い百首あまりが入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第二・春歌下・82番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「櫻の花のちりけるをよめる」(桜の花が散ったのを詠んだ歌)。
解説
紀貫之の歌。次の紀友則の「しづ心なく」の歌と呼応する。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、15頁(コマ21)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日