源氏物語 第48帖 早蕨(15)
匂宮の戒め
匂宮が出かけようとして、出立の挨拶に中の君のもとへいらした。たいそう清らかに身なりを整え、化粧もして、見るかいのあるご様子である。中納言(薫)がこちらに来ているのだと見て、匂宮は「どうしてそうむやみに突き放して外に座らせているのです。あなたのためには、あまりに妙だと思うほど安心な心寄せの人を。私にとっては愚かしいことにもなりかねないと思われるが、さすがにむやみに隔てが多いのは罪にもなるでしょう。近くで昔話でもなさるといい」などと申し上げるものの、「とはいえ、あまり気を許すのもまたどうでしょう。疑わしい下心もあるかもしれませんよ」と言い返すので、中の君は一方ならず煩わしいが、自分の心にも哀れ深く思い知られた薫のお心を、今になっておろそかにすべきではないので、薫も思って言っているように、亡き姉君の代わりになぞらえ申し上げて、こうして心を分かっていると見ていただける折もあればとは思うが、さすがに匂宮があれこれと方々に穏やかならず言いなすので、苦しく思うのだった。
- 1宮宮みや出出いででで給給たまははわむむんとてとてとて御御おんまかりまかりまかり申申もうしししににに渡渡わたりりり給給たまへへえりりり。。。いといといと淸淸きよらにらにらにひきひきひき繕繕つくろひひいけさうけさうけそうじじじ給給たまひひいててて見見みるるるかひかひかいあるあるある御御おんさまさまさまなりなりなり。。。中中ちゅう納納な言言ごんはははこなたこなたこなたににになりなりなりけりけりけりととと見見み給給たまひひいててて、、、「「「などなどなどかかかむげむげむげにににさしさしさし放放はなちちちてててははは出出いだしししすゑすゑすえ給給たまへへえるるる。。。御御おんあたりあたりあたりにににはははあまりあまりあまりあやしあやしあやしととと思思おもふふうまでまでまでうしろうしろうしろやすかりやすかりやすかりししし心心こころよせよせよせををを、、、我我わがががためためためはははをこがましきをこがましきおこがましきことことこともももやややととと覺覺おぼゆれゆれゆれどどど、、、さすがさすがさすがにににむげむげむげにににへだてへだてへだて多多おおからからからむむんははは罪罪つみもももこそこそこそうれうれうれ。。。近近ちかやかやかやかにてにてにて昔昔むかし物物もの語語がたりもももうちうちうち語語かたらひらひらい給給たまへへえかしかしかし」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまふふうものものものからからから「「「さささはははありありありともともともあまりあまりあまり心心こころゆるびゆるびゆるびせせせむむんももも又又またいかにいかにいかにぞぞぞややや。。。疑疑うたがはしきはしきわしきまたまたまたののの心心こころにににもももぞぞぞあるあるあるややや」」」とととうちうちうち返返かえしししのたまへのたまへのたまえばばば、、、一一ひとかたかたかたならならならずずずわづらはしけれわづらはしけれわずらわしけれどどど、、、我我わががが御心御心みこころにににもももあはれあはれあわれ深深ふかくくく思思おもひひいしらしらしられれれにににししし人人ひとののの御心御心みこころををを、、、今今いましもしもしもおろかおろかおろかなるなるなるべきべきべきならならならねねねばばば、、、かのかのかの人人ひとももも思思おもひひいのたまふのたまふのたまうめるめるめるやうやうようににに、、、いにしへいにしへいにしえののの御御おんかはりかはりかわりとととなずらへなずらへなずらえ聞聞きこえええててて、、、かうかうこう思思おもひひい知知しりりりけりけりけりととと見見みえええ奉奉たてまつるるるふしふしふしもももあらあらあらばやばやばやとととはははおぼせおぼせおぼせどどど、、、さすがさすがさすがにににとととやややかくかくかくやややととと方方かた々々がたにににやすからやすからやすからずずず聞聞きこえええなしなしなし給給たまへへえばばば、、、苦苦くるしうしうしゅうおぼさおぼさおぼされれれけりけりけり。。。
現代語訳
匂宮が出かけようとなさって、出立のご挨拶に中の君のもとへいらっしゃった。たいそう清らかに身なりを整え、化粧もなさって、見るかいのあるご様子である。中納言がこちらに来ているのだとご覧になって、匂宮は「どうして、そうむやみに突き放して、外に座らせていらっしゃるのです。あなたのあたりには、あまりに妙だと思うほど安心だった心寄せの人を。私のためには愚かしいことにもなりはしないかと思われるが、さすがにむやみに隔てが多いのは、罪にもなるでしょう。近くで昔話でもお語らいなさるといい」などと申し上げなさるものの、「とはいえ、あまり気を許すのも、またどうでしょう。疑わしい下心もあるかもしれませんよ」と言い返しなさるので、中の君は一方ならず煩わしいけれど、ご自分のお心にも哀れ深く思い知られた薫のお心を、今になっておろそかにすべきではないので、あの人も思っておっしゃっているように、亡き姉君の代わりになぞらえ申し上げて、このように心を分かっていたと見ていただける折もあればとはお思いになるが、さすがに匂宮があれこれと方々に穏やかならず言いなしなさるので、苦しくお思いになるのだった。
意訳
参内前の匂宮が中の君のもとに来て、薫を外に座らせていることを咎め、もっと親しく昔話をせよと勧める。しかし同時に、薫に下心があるかもしれないと疑う言葉を口にする。中の君は、薫の誠意に応えたいと思いながらも、匂宮の疑いに苦しむ。
語釈・文法注
文法
- 「御まかり申し」(御まかり申しに渡り給へり)
- 退出の挨拶。出かける前の挨拶。
- 「けさうじ」(ひき繕ひけさうじ給ひて)
- 化粧じ。化粧をする。
- 「またの心」(疑はしきまたの心にもぞあるや)
- 別の心、下心。
解説
早蕨の帖は、匂宮が薫と中の君の仲を疑う言葉で終わる。親しくせよと言いながら疑う匂宮の矛盾した態度が、三人の関係に影を落とす。
中の君は、薫を姉の代わりとして慕いたいと願う。しかし匂宮の疑いと、薫の中の君への思いが、次の宿木の帖で複雑に絡み合っていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1002–1003頁(コマ212)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日