源氏物語 第33帖 藤裏葉(1)
極楽寺の法要
明石の姫君の入内準備の間も、夕霧は物思いに沈んでいる。内大臣が折れてきたと聞きながらも、同じことなら体裁よく事を運びたいと我慢している。雲居雁も、夕霧の縁談の噂を嘆き、二人は背き合いながらも互いに恋い慕っている。内大臣は、夕霧が中務宮の姫君と結婚してしまっては困ると思い、自分が折れるしかないと考えるが、きっかけを探している。三月二十日、大宮の命日に極楽寺で法要が営まれ、内大臣は子息たちを引き連れて参詣する。夕霧は、盛りの美しさで、内大臣に気をつかって慎み深く振る舞う。夕方、花の散り乱れる中、内大臣は夕霧の袖を引き寄せて、今日の御法事の縁に免じて許してほしいと語りかける。夕霧はかしこまって答え、その夜は内大臣の真意を思って眠れない。

- 1御御おんいそぎいそぎいそぎののの程程ほどにににももも宰相宰相さいしょうののの中將中將ちゅうじょうはははながめながめながめがちがちがちにてにてにてほれぼれしきほれぼれしきほれぼれしき心地心地ここちするするするををを、、、かつかつかつはははあやしくあやしくあやしくわがわがわが心心こころながらながらながらしうねきしうねきしゅうねきぞぞぞかしかしかし、、、あながちにあながちにあながちにかうかうこう思思おもふふうことことことならならならばばば關關せき守守もりのののうちうちうちもももねねねぬぬぬべきべきべき氣色氣色けしきににに思思おもひひいよわりよわりよわりたたたなるなるなるををを聞聞ききききながらながらながら、、、同同おなじくじくじくばばば人人ひとわろからわろからわろからぬぬぬさまさまさまににに見見みはてはてはてむむんととと念念ねんずるずるずるももも苦苦くるしくしくしく思思おもひひい亂亂みだれれれ給給たまふふう。。。女君女君おんなぎみもももおとゞおとゞおとどのののかすめかすめかすめ給給たまひひいしししことことことのののすぢすぢすじををを、、、若若もしししさささもももあらあらあらばばば何何なにののの名殘名殘なごりかかかはははととと嘆嘆なげかしうかしうかしゅうててて、、、怪怪あやしくしくしくそむきそむきそむきそむきそむきそむきにににさすがさすがさすがなるなるなる御御おんもろもろもろ戀戀ごひひいなりなりなり。。。
- 2おとゞおとゞおとどもももさささこそこそこそ心心こころづよがりづよがりずよがり給給たまひひいしかしかしかどどどたけからたけからたけからぬぬぬにににおぼしおぼしおぼし煩煩わずらひひいててて、、、かのかのかの宮宮みやにににもももさやうさやうさようににに思思おもひひいたちたちたちはてはてはて給給たまひひいなばなばなば又又またとかくとかくとかく改改あらためめめ思思おもひひいかゝづらはかゝづらはかかずらわむむん程程ほど、、、人人ひとのののためためためももも苦苦くるしくしくしく、、、我我わががが御御おん方方かたざまざまざまにににももも人人ひと笑笑わらははわれれれにににおのづからおのづからおのずからかろがろしきかろがろしきかろがろしき事事ことやややまじらまじらまじらむむん、、、忍忍しのぶぶぶとととすれすれすれどどどうちうちうちうちうちうちのののことことことあやまりあやまりあやまりももも、、、世世よににに漏漏もりりりにににたるたるたるべしべしべし、、、とかくとかくとかくまぎらはしまぎらはしまぎらわしててて猶猶なおまけまけまけぬぬぬべきべきべきなななめりめりめりとととおぼしおぼしおぼしなりなりなりぬぬぬ。。。
- 3うへうへうえはははつれなくつれなくつれなくててて恨恨うらみみみ解解とけけけぬぬぬ御御おん中中なかなれなれなればばばゆくりなくゆくりなくゆくりなくいひいひいいよらよらよらむむんもももいかゞいかゞいかがとととおぼしおぼしおぼし憚憚はばかりりりててて、、、ことごとしくことごとしくことごとしくもてなさもてなさもてなさむむんももも人人ひとののの思思おもははわむむん所所ところをこをこおこなりなりなり、、、いかなるいかなるいかなるついでついでついでしししてててかかかはははほのめかすほのめかすほのめかすべきべきべきなどなどなどおぼすおぼすおぼすににに、、、三月三月やよい二十日二十日はつかおほいおほいおおい殿殿とのののの大宮大宮おおみやののの御御おん忌忌き日日にちにてにてにて極極ごく樂樂らく寺寺じにににまうでまうでもうで給給たまへへえりりり。。。君達君達きんだち皆皆みなひきひきひきつれつれつれ勢勢いきおひひいあらまほしくあらまほしくあらまほしく上達部上達部かんだちめなどなどなどもももあまたあまたあまた參參まいりりり集集つどひひい給給たまへへえるるるににに、、、宰相宰相さいしょうののの中將中將ちゅうじょうをさをさをさをさおさおさけはひけはひけわい劣劣おとらららずずずよそほしくよそほしくよそおしくててて、、、かたちかたちかたちなどなどなど只今只今ただいまいみじきいみじきいみじき盛盛さかりりりにににねびねびねび行行ゆきききててて、、、取取とりりり集集あつめめめめでたきめでたきめでたき人人ひとののの御御おん有樣有樣ありさまなりなりなり。。。
- 4このこのこのおとゞおとゞおとどをををばばばつらしつらしつらしととと思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまへへえしししよりよりより見見みえええ奉奉たてまつるるるももも心心こころづかひづかひずかいせせせられられられててて、、、いといといといとういとういとう用意用意よういしししもてもてもて靜靜しずめめめてててものしものしものし給給たまふふうをををおとゞおとゞおとどももも常常つねよりよりよりははは目目めとゞめとゞめとどめ給給たまふふう。。。御御おんずずず經經きょうなどなどなどははは六條院六條院ろくじょういんよりよりよりもももせせせさせさせさせ給給たまへへえりりり。。。宰相宰相さいしょうののの君君きみはははましてましてましてよろづよろづよろずをををとりとりとりもちもちもちててて哀哀あわれににに營營いとなみみみ仕仕つかうまつりうまつりうまつり給給たまふふう。。。
- 5夕夕ゆうかけかけかけててて皆皆みな歸歸かえりりり給給たまふふうほどほどほど花花はなははは皆皆みな散散ちりりりみだれみだれみだれ霞霞かすみたどたどしきたどたどしきたどたどしきににに、、、おとゞおとゞおとどむかしむかしむかしおぼしおぼしおぼし出出いでででゝゝてなまめかしうなまめかしうなまめかしゅううそぶきうそぶきうそぶきながめながめながめ給給たまふふう。。。宰相宰相さいしょうももも哀哀あわれなるなるなる夕夕ゆうべののの氣色氣色けしきにににいとゞいとゞいとどうちうちうちしめりしめりしめりててて、、、「「「あまあまあまげげげなりなりなり」」」ととと人々人々びとののの騷騷さわぐぐぐににに猶猶なおながめながめながめ入入いりりりててて居居い給給たまへへえりりり心心こころときめきときめきときめきににに見見み給給たまふふうことことことやややありありありけむけむけん、、、袖袖そでをををひきひきひきよせよせよせててて「「「などなどなどいといといとこよなくこよなくこよなくはははかうじかうじこうじししし給給たまへへえるるる。。。今日今日きょうののの御御おんのりのりのりのののゑゑえをををももも尋尋たずねねねおぼさおぼさおぼさばばば罪罪つみををを許許ゆるししし給給たまへへえてててよよよややや。。。のこりのこりのこり少少すくなくくくなりなりなり行行ゆくくく末末すえののの世世よににに思思おもひひい捨捨すててて給給たまへへえるるるもももうらみうらみうらみ聞聞きこゆゆゆべくべくべく」」」などなどなどのたまへのたまへのたまえばばば、、、
- 6うちうちうちかしこまりかしこまりかしこまりててて「「「過過すぎぎぎにににししし御御おんおもむけおもむけおもむけももも、、、賴賴たのみみみ聞聞きこえええさすさすさすべきべきべきさまさまさまにににうけうけうけ給給たまはりはりわりおくおくおくことことこと侍侍はべりりりしかしかしかどどど、、、許許ゆるしししなきなきなき御御おん氣色氣色けしきににに憚憚はばかりりりつゝつゝつつ」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまふふう。。。心心こころあわたゞしきあわたゞしきあわただしきあまあまあま風風かぜににに皆皆みなちりぢりちりぢりちりじりにににきほひきほひきおいかへりかへりかえり給給たまひひいぬぬぬ。。。君君きみいかにいかにいかに思思おもひひいててて例例れいならならならずずず氣色氣色けしきばみばみばみ給給たまひひいつつつらむらむらんなどなどなど、、、世世よととと共共ともににに心心こころをををかけかけかけたるたるたる御御おんあたりあたりあたりなれなれなればばばはかなきはかなきはかなきことことことなれなれなれどどど耳耳みみとまりとまりとまりてててとととやややかうかうこうやややととと思思おもひひい明明あかししし給給たまふふう。。。
現代語訳
姫君の入内準備の間にも、宰相の中将(夕霧)は物思いがちで、ぼんやりとした気持ちでいるのを、一方では、我ながら妙に執念深いことだ、強いてこれほど思うのならば、関守も眠ってしまいそうに、内大臣が気弱くなっているようだと聞きながら、同じことなら、体裁の悪くないように最後まで見届けようと、我慢するのも苦しく、思い乱れていらっしゃる。女君(雲居雁)も、大臣がほのめかしなさった縁談の筋を、もしそうなったら、何の名残があろうかと嘆かわしくて、妙に背き合いながらも、さすがに互いに恋い慕うお二人である。
大臣(内大臣)も、あれほど強気でいらっしゃったけれど、意地を通しきれずに思い悩みなさって、あの中務宮にもそのように話を決めておしまいになったら、またあれこれと改めて関わり合うのも、相手にとっても気の毒で、自分の方にも物笑いになって、自然と軽々しいことがまじるだろう、隠そうとしても、内々の過ちも世に漏れてしまっているだろう、何とか取り繕って、やはり自分が折れるしかないようだと、お思いになった。
表面はつれなくて、恨みの解けないお仲なので、急に言い寄るのもどうかとためらいなさって、大げさに取り扱うのも、人がどう思うかと思うと愚かしい、どのような機会にほのめかしたらよいだろうかなどとお思いになっていると、三月二十日、亡き太政大臣の北の方である大宮の御命日で、極楽寺に参詣なさった。君達を皆引き連れて、ご威勢も申し分なく、上達部なども大勢参集していらっしゃる中で、宰相の中将は少しも見劣りせず、堂々として、容貌なども、今ちょうどすばらしい盛りに成長して、すべてを取り集めたようなすばらしい人のご様子である。
夕霧は、この大臣をつらいと思い申し上げてからは、お目にかかるのも気がつかわれて、たいそう念入りに用心して、落ち着いて振る舞っていらっしゃるのを、大臣もいつもよりは目をおとめになる。御誦経なども、六条院からもおさせになった。宰相の君は、なおさら何事も引き受けて、心を込めてお勤め申し上げなさる。
夕方になって皆がお帰りになる頃、花は皆散り乱れ、霞がたどたどしく立ちこめているところで、大臣は昔をお思い出しになって、優美に詩を口ずさみながら眺めていらっしゃる。宰相もしみじみとした夕暮れの様子に、いっそう沈み込んで、「雨になりそうだ」と人々が騒ぐのに、なおも眺め入っていらっしゃる。大臣は、心をときめかせてご覧になることがあったのだろうか、夕霧の袖を引き寄せて、「どうしてそれほどひどく私を責めていらっしゃるのか。今日の御法事の縁をお考えになるならば、罪を許してくださいよ。残り少なくなっていく晩年に、見捨てていらっしゃるのも、お恨み申し上げたいほどで」などとおっしゃるので、
夕霧はかしこまって、「亡き大宮のご意向も、頼りにお願い申し上げるようにと承っておりましたけれど、お許しのないご様子に遠慮しながら」などと申し上げなさる。慌ただしい雨風に、皆散り散りに急いでお帰りになった。夕霧は、大臣はどう思って、いつになく意味ありげにおっしゃったのだろうなどと、いつも心をかけている御あたりのことなので、ちょっとしたことだけれど耳にとまって、あれこれと思いながら夜を明かしなさる。
意訳
夕霧と雲居雁は互いに恋い慕い、内大臣も、自分が折れるしかないと思い始める。
大宮の命日の極楽寺の法要で、内大臣は夕霧の袖を引き寄せて許しを請い、夕霧はその真意を思って眠れない。
語釈・文法注
文法
- 伝聞推定の「なる」(思ひよわりたなるを聞きながら)
- 「たるなる」の撥音便無表記。「気弱くなっているようだと聞きながら」。
- 推量の「けむ」(見給ふことやありけむ)
- 過去推量。語り手が内大臣の心中を推し量る。
解説
藤裏葉の巻は、夕霧と雲居雁の長い恋がついに実を結ぶ巻である。内大臣が夕霧の袖を引き寄せて許しを請う場面は、六年に及ぶ二人の苦しみの終わりを告げるものである。
大宮の命日に和解の糸口が生まれるのは、孫たちの恋を最後まで案じていた大宮の願いがかなったことを意味する。「御のりのゑ」(御法事の縁)という言葉には、大宮への思いが込められている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、568–571頁(コマ289–290)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日