源氏物語 第30帖 藤袴(1)
玉鬘の悩み
尚侍としての宮仕えを誰もが勧めるが、玉鬘は思い悩む。実の親でさえ心を許せない世の中で、宮仕えに出て、思いがけず帝の寵愛を受けるようなことがあれば、秋好中宮や弘徽殿の女御に疎まれ、自分を笑いものにしようとする人々も多いだろう。かといって、六条院にとどまれば、源氏の懸想がわずらわしく、世間の疑いも晴れない。実父の内大臣も源氏に遠慮して引き取ろうとしない。真相が明かされてからは、源氏はいっそう遠慮なく言い寄ってくる。相談できる母親もいない玉鬘は、夕暮れの空を眺めて物思いにふける。

- 1內內ないしのののかみかみかみののの御御おん宮仕宮仕みやづかえののの事事ことををを、、、誰誰たれももも誰誰たれもももそゝのかしそゝのかしそそのかし給給たまふふうもももいかならいかならいかならむむん、、、親親おやととと思思おもひひい聞聞きこゆるゆるゆる人人ひとののの御心御心みこころだにだにだにうちとくうちとくうちとくまじきまじきまじき世世よなりなりなりけれけれければばば、、、况况ましてしてしてさやうさやうさようののの交交まじらひらひらいにににつけつけつけててて心心こころよりよりより外外ほかにににびんなきびんなきびんなき事事こともももあらあらあらばばば、、、中宮中宮ちゅうぐうももも女御女御にようごももも方々方々かたがたにににつけつけつけててて心心こころおきおきおき給給たまははわゞゞば、、、はしたなからはしたなからはしたなからむむんににに、、、わがわがわが身身みははは斯斯かくくくはかなきはかなきはかなきさまさまさまにてにてにていづいづいず方方かたにににももも深深ふかくくく思思おもひひい留留とどめめめられられられ奉奉たてまつるるる程程ほどもももなくなくなく、、、淺淺あさききき覺覺おぼえええにてにてにて啻啻ただならならならずずず思思おもひひい言言いひひい、、、いかでいかでいかで人人ひと笑笑わらへへえなるなるなるさまさまさまににに見見み聞聞ききききなさなさなさむむんとととうけびうけびうけび給給たまふふう人々人々びとももも多多おおくくく、、、とかくとかくとかくにににつけつけつけててて安安やすからからからぬぬぬ事事ことのみのみのみありありありぬぬぬべきべきべきををを、、、物物もの覺覺おぼししし知知しるるるまじきまじきまじき程程ほどにににしししあらあらあらねねねばばばさまざまさまざまさまざまににに思思おもほしほしおし亂亂みだれれれ、、、人人ひと知知しれれれずずず物物ものなげかしなげかしなげかし。。。
- 2さりとてさりとてさりとてかゝるかゝるかかる有樣有樣ありさまももも惡惡あしきしきしき事事ことはははなけれなけれなけれどどど、、、このこのこのおとゞおとゞおとどののの御御おん心心こころばへばへばえのののむづかしくむづかしくむずかしく心心こころつきなきつきなきつきなきももも、、、いかなるいかなるいかなる序序ついでにににかかかはははもてもてもて離離はなれれれててて人人ひとののの推推おししし量量はかるるるべかべかべかめるめるめるすぢすぢすじををを心心こころ淸淸きよくくくもももありありあり果果はつつつべきべきべき。。。誠誠まことののの父父ちちおとゞおとゞおとどもももこのこのこの殿殿とのののの覺覺おぼさささむむん所所ところををを憚憚はばかりりり給給たまひひいててて、、、うけばりうけばりうけばりててて取取とりりり放放はなちちちけざやぎけざやぎけざやぎ給給たまふふうべきべきべき事事ことにににもももあらあらあらねねねばばば、、、猶猶なおとてもとてもとてもかくてもかくてもかくても見見み苦苦ぐるしうしうしゅうかけがけしきかけがけしきかけがけしき有樣有樣ありさまにてにてにて心心こころををを惱惱なやましましまし人人ひとにににもてもてもて騷騷さわがががるるるべきべきべき身身みなななめりめりめりととと、、、中々中々なかなかこのこのこの親親おや尋尋たずねねね聞聞きこえええ給給たまひひいててて後後のちははは殊殊ことににに憚憚はばかりりり給給たまふふう氣色氣色けしきもももなきなきなきおとゞおとゞおとどののの君君きみののの御御おんもてなしもてなしもてなしををを取取とりりり加加くわへへえつゝつゝつつ人人ひと知知しれれれずずずなむなむなん歎歎なげかしかりかしかりかしかりけるけるける。。。
- 3思思おもふふう事事ことをををまほまほまほならならならずずずともともとも片片かたはしはしわしにてにてにてもももうちうちうちかすめかすめかすめつつつべきべきべき女女め親親おやもももおはせおはせおわせずずず、、、いづいづいず方方かたもももいづいづいず方方かたもももいといといと耻耻はずかしげしげしげにににいといといと麗麗うるはしきはしきわしき御御おんさまさまさまどもどもどもにににははは何事何事なにごとをををかかかははは、、、さささなむなむなん斯斯かくくくなむなむなんともともとも聞聞きこえええ分分わききき給給たまははわむむん。。。世世よののの人人ひとににに似似にぬぬぬ身身みののの有樣有樣ありさまをををうちうちうちながめながめながめつゝつゝつつ夕夕ゆう暮暮ぐれののの空空そらののの哀哀あわれげげげなるなるなる氣色氣色けしきをををはしはしはし近近じかくくくててて見見み出出いだししし給給たまへへえるるるさまさまさまいといといとをかしをかしおかし。。。
現代語訳
尚侍としての御宮仕えのことを、誰も誰もお勧めになるけれど、どうしたものだろう。親と思い申し上げる人のお心でさえ打ち解けられない世の中なので、まして宮仕えのような交わりにつけて、思いがけず具合の悪いことがあったら、中宮も女御も、それぞれのお立場から心隔てをお置きになったら、きまりの悪いことになるだろう。わが身は、このように頼りない有様で、どちらの方にも深くお心にとめていただくほどでもなく、浅い評判で、ひどくあれこれと言い、何とかして物笑いになるような有様を見聞きしようと願う人々も多く、何かにつけて心穏やかでないことばかりがあるに違いないのを、物の道理をわきまえない年ごろでもないので、さまざまに思い乱れて、人知れず嘆かわしい。
そうかといって、このような今の有様も悪いことではないけれど、この大臣(源氏)のお心づかいがわずらわしく好ましくないのも、どのような機会に、きっぱりと離れて、世間の人が推量しているらしい筋を、潔白なまま終わらせることができるだろうか。実の父大臣も、この殿のお考えになるところに遠慮なさって、表立って引き取り、はっきりとお扱いになるはずもないので、やはりどちらにしても、見苦しく色めいた有様で、心を悩まし、人に噂されるはずの身なのだろうと、かえって実の親をお尋ね申し上げてからは、格別に遠慮なさる様子もない大臣の君のお振る舞いを思い加えながら、人知れず嘆かわしく思っていた。
思うことを、すっかりとではなくても、少しでもほのめかすことのできる母親もいらっしゃらず、どちらの方も、たいそう気後れするほど立派で端正なご様子の方々なので、何事を、こうです、ああですと、申し上げて区別していただけようか。世の人に似ない身の有様を思いながら、夕暮れの空のしみじみとした様子を、端近くでながめていらっしゃる様子は、たいそう美しい。
意訳
玉鬘は、宮仕えに出れば中宮や女御に疎まれ、六条院にとどまれば源氏の懸想がわずらわしいと、思い悩む。実父の内大臣も源氏に遠慮して引き取ろうとしない。
相談できる母親もいない玉鬘は、夕暮れの空を眺めて物思いにふける。
語釈・文法注
文法
- 反語の「かは」(いかなる序にかはもて離れて…あり果つべき)
- 「どのような機会に潔白なまま終わらせることができようか、いや、できない」。
- 「つべき」(うちかすめつべき女親)
- 強意の「つ」+可能の「べし」。「ほのめかすことのできる母親」。
解説
藤袴の巻は、玉鬘の心の中を描くことから始まる。宮仕えにも、六条院にとどまることにも、それぞれの苦しみがある。真相が明かされても、玉鬘の立場は少しも楽にならない。
「女親もおはせず」という一句に、母の夕顔を幼くして亡くした玉鬘の孤独が凝縮されている。夕暮れの空を眺める玉鬘の姿は、母夕顔の面影とも重なる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、522–523頁(コマ266)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日