源氏物語 第30帖 藤袴(2)
夕霧、勅使として訪れる
大宮の喪に服して薄鈍色の喪服を着た玉鬘は、かえって華やかに美しい。同じ色の直衣を着た夕霧が、帝の仰せを伝える使いとして訪れる。夕霧は、これまで玉鬘を姉と思って親しく接してきたので、御簾に几帳を添えて直接対面する。野分の朝に垣間見て以来、心ひかれながらも抑えてきた夕霧は、姉ではないと知って思いが募り、源氏も玉鬘を手放すまいと思うと胸がふさがる。夕霧は人払いをして、帝の意向を伝え、十三日に賀茂の河原で除服の祓えをすることを告げる。夕霧が、喪服の色がなければ縁者とも思えなかったと言うと、玉鬘は、この色こそしみじみとしたものだと、しんみりと答える。

- 1薄薄うすきききにびにびにび色色いろののの御御おんぞぞぞ懷懷なつかしきかしきかしき程程ほどにににやつれやつれやつれててて例例れいににに變變かわりりりたるたるたる色色いろ合合あいにににしもしもしも形形かたちはははいといといと華華はなやかやかやかにににもてもてもてはやさはやさはやされれれててておはするおはするおわするををを、、、御前御前おまえなるなるなる人々人々びとははは打打うちちち笑笑えみみみててて見見み奉奉たてまつるるるににに、、、宰相宰相さいしょうののの中將中將ちゅうじょう同同おなじじじ色色いろののの今今いま少少すこしししこまやかこまやかこまやかなるなるなる直衣直衣のうし姿姿すがたにてにてにて纓纓えい卷卷まききき給給たまへへえるるるしもしもしも、、、又又またいといといとなまめかしくなまめかしくなまめかしく淸淸きよらららにてにてにておはしおはしおわしたりたりたり。。。
- 2始始はじめよりよりより物物ものまめやかまめやかまめやかににに心心こころ寄寄よせせせ聞聞きこえええ給給たまへへえばばばもてもてもて離離はなれれれてててうとうとしきうとうとしきうとうとしきさまさまさまにににはははもてなしもてなしもてなし給給たまははわざりざりざりししし習習ならひひいににに、、、今今いまあらあらあらざりざりざりけりけりけりとてとてとてこよなくこよなくこよなく變變かわらららむむんもももうたてうたてうたてあれあれあればばば猶猶なおみすみすみすににに几帳几帳きちょう添添そへへえたるたるたる御御おん對面對面たいめんははは人人ひとづてづてずてならならならでででありありありけりけりけり殿殿とのののの御御おんせうそこせうそこしょうそこにてにてにて內內うちよりよりより仰言仰言おおせごとあるあるあるさまさまさまやがてやがてやがてこのこのこの君君きみののの承承うけたまわりりり給給たまへへえるるるなりなりなりけりけりけり。。。
- 3御御おん返返かえりりりおほどかおほどかおおどかなるなるなる物物ものからからからいといといと目目めやすくやすくやすく聞聞きこえええなしなしなし給給たまふふうけはひけはひけわいのののらうらうしくらうらうしくろうろうしく懷懷なつかしきかしきかしきにににつけつけつけてててもももかのかのかの野分野分のわきのののあしたあしたあしたののの御御おん朝顏朝顏あさがおははは、、、心心こころにににかゝりかゝりかかりててて戀戀こいしきしきしきをををうたてうたてうたてあるあるあるすぢすぢすじににに思思おもひひいしししををを、、、聞聞きききき明明あきらめらめらめててて後後のちにににははは猶猶なおもももあらあらあらぬぬぬ心地心地ここち添添そひひいててて、、、このこのこの宮仕宮仕みやづかえををを大方大方おおかたにににしもしもしも覺覺おぼししし放放はなたたたじじじかしかしかし、、、さばかりさばかりさばかり見見み處處どころあるあるある御御おんあはひあはひあわいどもどもどもにてにてにてをかしきをかしきおかしきさまさまさまなるなるなる事事ことののの煩煩わずらはしきはしきわしきはたはたはた必必かならずずず出出いででで來來きなむなむなんかしかしかしととと思思おもふふうににに、、、啻啻ただならならならずずず胸胸むねふたがるふたがるふたがる心地心地ここちすれすれすれどどど、、、
- 4つれなくつれなくつれなくすくよかすくよかすくよかにてにてにて「「「人人ひとににに聞聞きかかかすすすまじまじまじととと侍侍はべるるることことことををを聞聞きこえええさせさせさせむむんにににいかゞいかゞいかが侍侍はべるるるべきべきべき」」」ととと氣色氣色けしき立立だてててばばば、、、近近ちかくくく侍侍さぶらふふう人人ひとももも少少すこししし退退しりぞきききつゝつゝつつ御御おん几帳几帳きちょうのののうしろうしろうしろなどなどなどにににそばみそばみそばみあへあへあえりりり。。。そらそらそらせうそこせうそこしょうそこをををつきづきしうつきづきしうつきずきしゅう取取とりりり續續つづけけけてててこまやかこまやかこまやかににに聞聞きこえええ給給たまふふう。。。上上うえののの御御おん氣色氣色けしきののの啻啻ただならならならぬぬぬすぢすぢすじをををさるさるさる御心御心みこころししし給給たまへへえなどなどなどやうやうようのののすぢすぢすじなりなりなり。。。いらへいらへいらえ給給たまははわむむん事事こともももなくなくなくうちうちうち歎歎なげききき給給たまへへえるるる程程ほど忍忍しのびやかびやかびやかににに美美うつくしうくしうくしゅういといといと懷懷なつかしきかしきかしきににに、、、
- 5猶猶なおえええ忍忍しのぶぶぶまじくまじくまじく「「「御御おん服服ぶくもももこのこのこの月月つきにににははは脫脫ぬがががせせせ給給たまふふうべきべきべきををを日日ひ序序ついでででなむなむなん宜宜よろしからしからしからざりざりざりけるけるける。。。十十じゅう三三さん日日にちににに河河かわ原原らへへへ出出いでででさせさせさせ給給たまふふうべきべきべき由由よしののの給給たまははわせせせつつつ。。。なにがしなにがしなにがしももも御御おん供供ともににに侍侍さぶらふふうべくべくべくなむなむなん思思おもひひい給給たまふるふるうる」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえばばば「「「たぐひたぐひたぐい給給たまははわむむんもももことごとしきことごとしきことごとしきやうやうようにににややや侍侍はべらららむむん。。。忍忍しのびやかびやかびやかにてにてにてこそこそこそよくよくよく侍侍はべらららめめめ」」」とととののの給給たまふふう。。。このこのこの御御おんぶくぶくぶくなどなどなどののの委委くわしきしきしきさまさまさまををを人人ひとににに普普あまねくねくねく知知しらせらせらせじじじとととおもむけおもむけおもむけ給給たまへへえるるる氣色氣色けしきいといといとらうらうろうありありあり。。。
- 6中將中將ちゅうじょう「「「洩洩もらさらさらさじじじととと包包つつままませせせ給給たまふふうらむらむらんこそこそこそ心心こころ憂憂うけれけれけれ。。。忍忍しのびびび難難がたくくく思思おもひひい給給たまへへえらるゝらるゝらるる形形かた見見みなれなれなればばば、、、脫脫ぬぎぎぎ捨捨すててて侍侍はべらららむむん事事こともももいといといと物物もの憂憂うくくく侍侍はべるるるものものものををを、、、さてもさてもさてもあやしうあやしうあやしゅうもてもてもて離離はなれれれぬぬぬ事事ことののの又又また心得心得こころえ難難がたきききにににこそこそこそ侍侍はべれれれ。。。このこのこの御御おんあらはしあらはしあらわしごろもごろもごろもののの色色いろなくなくなくばばばえええこそこそこそ思思おもひひい給給たまへへえ分分わくくくまじかりまじかりまじかりけれけれけれ」」」とととののの給給たまへへえばばば「「「何事何事なにごとももも思思おもひひい分分わかかかぬぬぬ心心こころにににははは况况ましてしてしてともかくもともかくもともかくも思思おもううう給給たまへへえたどらたどらたどられれれ侍侍はべらららねねねどどど、、、斯斯かかるかるかる色色いろこそこそこそ怪怪あやしくしくしく物物もの哀哀あわれなるなるなる業業わざににに侍侍はべりりりけれけれけれ」」」とてとてとて例例れいよりよりよりもももしめりしめりしめりたるたるたる御御おん氣色氣色けしきいといといとらうたげらうたげろうたげにににをかしをかしおかし。。。
現代語訳
薄鈍色の御衣を、親しみやすい程度に地味に着て、いつもと違った色合いであるのに、かえって容貌はたいそう華やかに引き立てられていらっしゃるのを、御前の女房たちはほほえんで拝見していると、宰相の中将(夕霧)が、同じ色の、もう少し濃い直衣姿で、冠の纓を巻いていらっしゃるのも、またたいそう優美で、清らかでいらっしゃった。
初めから誠実に好意を寄せ申し上げていらっしゃったので、よそよそしい様子にはお扱いにならなかったこれまでの習慣から、今になって姉弟ではなかったといって、すっかり態度を変えるのも嫌なので、やはり御簾に几帳を添えたご対面は、人を介さずに行っていた。殿(源氏)のお使いとして、帝から仰せ言のあることを、そのままこの君がお伝え申し上げたのであった。
玉鬘のお返事は、おっとりしているものの、たいそう感じよく申し上げなさる様子が、洗練されて親しみやすいにつけても、あの野分の朝のお姿は、心にかかって恋しいのを、嫌な筋に思っていたが、事情を聞き知ってからは、なおさら穏やかでない気持ちが加わって、源氏はこの宮仕えを、普通のこととしてお見放しにはなるまい、あれほど見どころのあるお二人の間柄で、趣深い、わずらわしいことが、きっと起こるだろうと思うと、ひどく胸がふさがる気持ちがするけれど、
平気な顔できまじめに、「人に聞かせてはならないと仰せのことを申し上げたいのですが、どうでしょうか」と意味ありげにするので、近くに控えていた女房も少し退いて、御几帳の後ろなどに顔をそむけ合っている。夕霧は、作りごとの伝言をもっともらしく続けて、細やかに申し上げなさる。帝のご意向がただならぬものであることを、そのお心づもりでいなさいというような内容である。玉鬘がお返事することもなく、ため息をついていらっしゃる様子が、ひそやかにかわいらしく、たいそう慕わしいので、
やはりこらえきれずに、「御服喪も今月にはお脱ぎになるはずですが、日柄がよくないのでした。十三日に賀茂の河原へお出かけになるようにとおっしゃいました。私もお供いたそうと存じます」と申し上げなさると、玉鬘は「ご一緒くださるのも大げさなようでございましょう。ひそやかにするのがよいでしょう」とおっしゃる。この御服喪などの詳しい事情を、人に広く知らせまいとお心を向けていらっしゃる様子は、たいそう行き届いている。
中将は「漏らすまいと包み隠していらっしゃるのが、つらいことです。忍びがたく思われる大宮の形見なので、脱ぎ捨てますことも、たいそう気が進みませんのに、それにしても、不思議に縁の切れないことが、また合点がゆかないのです。この喪服の色がなかったら、あなたと縁続きとは思い分けられなかったでしょう」とおっしゃると、玉鬘は「何事も分別のつかない心には、まして何とも考えがたどれませんが、このような色こそ、妙にしみじみとしたものでございますね」と言って、いつもよりもしっとりと沈んだご様子が、たいそういじらしく趣深い。
意訳
大宮の喪に服する玉鬘のもとを、夕霧が帝の使いとして訪れる。姉ではないと知った夕霧は、玉鬘への思いが募り、源氏も玉鬘を手放すまいと思うと胸がふさがる。
夕霧は、帝の意向を伝え、十三日に河原で除服の祓えをすることを告げる。喪服の色に縁を感じる夕霧に、玉鬘はしんみりと答える。
語釈・文法注
文法
- 「まじ」(人に聞かすまじと侍ること)
- 打消意志。「人に聞かせてはならないということ」。
- 反実仮想「なくば…まじかりけれ」(色なくばえこそ思ひ給へ分くまじかりけれ)
- 「喪服の色がなかったら、縁続きとは思い分けられなかったでしょう」。
解説
玉鬘と夕霧が同じ鈍色の喪服を着ているのは、二人がともに大宮の孫だからである。姉弟ではなかったが、いとこ同士であることを、喪服の色が示している。
夕霧が「そらせうそこ」(作りごとの伝言)で人払いをするのは、玉鬘に思いを打ち明けるためである。まじめな夕霧の、珍しく大胆な振る舞いである。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、522–525頁(コマ266–267)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日