源氏物語 第14帖 澪標(11)
六条御息所の帰京と病
斎宮が交代し、六条御息所は娘の前斎宮とともに帰京する。源氏は何かと世話をするが、御息所は昔の仲に戻るまいと心を閉ざし、源氏も強いて訪れない。御息所は六条の旧邸で風雅に暮らしていたが、急に重く患い、出家する。源氏は驚いて見舞いに訪れ、弱りきった御息所の姿に泣く。

- 1まことまことまことやややかのかのかの齋宮齋宮さいぐうもももかはりかはりかわり給給たまひひいにににしかしかしかばばばみやすみやすみやす所所どころのぼりのぼりのぼり給給たまひひいてててのちのちのちかはらかはらかわらぬぬぬさまさまさまににに何事何事なにごともももとぶらひとぶらひとぶらい聞聞きこえええ給給たまふふうことことことはははありがたきありがたきありがたきまでまでまでなさけなさけなさけ盡盡つくししし給給たまへへえどどど、、、昔昔むかしだにだにだにつれなかりつれなかりつれなかりししし御心御心こころばへばへばえのののなかなかなかなかなかなかならならならむむん名殘名殘なごりははは見見みじじじととと思思おもひひい放放はなちちち給給たまへへえれれればばば、、、渡渡わたりりり給給たまひひいなどなどなどするするする事事ことははは殊殊ことににになしなしなし。。。
- 2あながちあながちあながちにににうごかしうごかしうごかし聞聞きこえええ給給たまひひいてててももも我我わががが心心こころながらながらながら知知しりりり難難がたくくくとかくとかくとかくかゝづらはかゝづらはかかずらわむむん御御おんありきありきありきなどなどなどももも所所ところせうせうしょうおぼしおぼしおぼしなりなりなりにににたれたれたればばば强强しひひいたるたるたるさまさまさまにににもももおはせおはせおわせずずず。。。齋宮齋宮さいぐうをををぞぞぞいかにいかにいかにねびねびねびなりなりなり給給たまひひいぬぬぬらむらむらんとととゆかしうゆかしうゆかしゅう思思おもひひいきこえきこえきこえ給給たまふふう。。。
- 3なほなほなおかのかのかの六條六條ろくじょうのののふるみやふるみやふるみやをををいといといとよくよくよくつくろひつくろひつくろいたりたりたりけれけれければばばみやびかみやびかみやびかにてにてにて住住すみみみ給給たもうううけりけりけり。。。よしづきよしづきよしずき給給たまへへえるるることことことふりふりふりがたくがたくがたくてててよきよきよき女房女房にょうぼうなどなどなど多多おおくくくすいすいすいたるたるたる人人ひとのののつどひつどひつどい所所ところにてにてにて物物もの寂寂さびしきしきしきやうやうようなれなれなれどどど、、、心心こころやれやれやれるるるさまさまさまにてにてにて經經へ給給たまふふう程程ほどににに、、、
- 4俄俄にわかにににおもくおもくおもく煩煩わずらひひい給給たまひひいててて物物もののののいといといと心心こころ細細ぼそくくくおぼさおぼさおぼされれれけれけれければばば、、、罪罪つみ深深ふかきききところところところににに年年とし經經へつるつるつるもももいみじういみじういみじゅうおぼしおぼしおぼしててて尼尼あまににになりなりなり給給たまひひいぬぬぬ。。。
- 5おとゞおとゞおとど聞聞きききき給給たまひひいててて、、、かけがけしきかけがけしきかけがけしきすぢすぢすじにににはははあらあらあらねねねどどど猶猶なおさるさるさるかたかたかたののの物物ものをををももも聞聞きこえええ合合あわせせせ人人ひとににに思思おもひひい聞聞きこえええつるつるつるををを、、、かくかくかくおぼしおぼしおぼしなりなりなりにににけるけるけるがががくちをしうくちをしうくちおしゅうおぼえおぼえおぼえ給給たまへへえばばば、、、驚驚おどろきききながらながらながら渡渡わたりりり給給たまへへえりりり。。。飽飽あかかかずずずあはれあはれあわれなるなるなる御御おんとぶらひとぶらひとぶらい聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 6近近ちかききき御御おん枕上枕上まくらがみにににおましおましおましよそひよそひよそいててて脇息脇息きょうそくにににおしおしおしかゝりかゝりかかりててて御御おん返返かえりりりなどなどなど聞聞きこえええ給給たまふふう。。。いたういたういとうよわりよわりよわり給給たまへへえるるるけはひけはひけわいなれなれなればばば絕絕たえええぬぬぬ心心こころざしざしざしののの程程ほどはははえええ見見みえええ奉奉たてまつらららでででやややとととくちくちくち惜惜おしうしうしゅうててていみじういみじういみじゅう泣泣ないいい給給たまふふう。。。
現代語訳
そうそう、あの斎宮も交代なさったので、御息所は都にお上りになって、その後、源氏は以前と変わらぬ様子で何かとお見舞い申し上げなさることは、めったにないほど情を尽くしなさるけれど、御息所は、昔でさえ冷淡だったお心のほどが、かえって中途半端なことになるような名残は見まいと思い切っていらっしゃるので、源氏がお訪ねになることなどは、とりたててない。
源氏も、強いてお心を動かし申し上げても、自分の心ながらどうなるかわからず、あれこれと関わり合うお出かけなども窮屈にお思いになるようになったので、強いて訪れる様子でもいらっしゃらない。斎宮のことを、どんなに大人びておなりになったろうかと、見たくお思い申し上げなさる。
御息所は、やはりあの六条の古い邸をたいそうよく修理して手入れしていたので、優雅に住んでいらっしゃった。風雅なご趣味は昔と変わらず、よい女房なども多く、風流な人々の集まる所で、何となく寂しいようではあるけれど、心を慰めて過ごしていらっしゃるうちに、急に重くお患いになって、何となくたいそう心細くお思いになったので、罪深い所(伊勢の神域)で年月を過ごしたのもたいそう恐ろしくお思いになって、尼におなりになった。
源氏の大臣はお聞きになって、色めいた間柄ではないけれど、やはりそうした風雅な方面のことをご相談する相手とお思い申し上げていたのに、このように出家を決心なさったのが残念に思われなさるので、驚きながらお訪ねになった。尽きることなくしみじみとしたお見舞いを申し上げなさる。御息所は、お近くの枕元にお席を設けて、脇息に寄りかかって、ご返事などを申し上げなさる。たいそう弱っていらっしゃる様子なので、源氏は、変わらぬ思いのほどをお見せ申し上げられないままになってしまうのかと残念で、ひどくお泣きになる。
意訳
斎宮の交代で、六条御息所は娘とともに帰京する。源氏は世話をするが、御息所は昔の仲に戻るまいとし、源氏も強いて訪れない。源氏は斎宮の成長を見たいと思う。
御息所は六条の旧邸で風雅に暮らしていたが、急に重く患い、伊勢の神域で仏道から遠ざかっていた罪を恐れて出家する。源氏は驚いて見舞い、弱りきった御息所の姿に泣く。
語釈・文法注
- すりし
- 修理(すり)。建物を修繕すること。
文法
- 打消意志の「じ」(名殘は見じ)
- 「名残は見まい」。
- 「でや」(え見え奉らでや)
- 「お見せ申し上げられないままになってしまうのか」。「で」は打消の接続助詞。下に「やみなむ」などが省略された形。
解説
斎宮の交代は、朱雀帝の譲位にともなうものである。伊勢に下った六条御息所は、およそ六年ぶりに都に戻ってくる。御息所が源氏を拒むのは、かつての苦しい恋を繰り返すまいとする、誇り高い女性の決意の表れである。
伊勢の斎宮は神に仕えるため、仏教に関することは忌まれた。御息所が「罪深きところに年經つる」ことを恐れて出家するのは、そうした長年の仏道からの隔たりを償おうとする思いによる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、296–299頁(コマ151–152)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日