源氏物語 第14帖 澪標(12)
御息所の遺言
六条御息所は、娘の前斎宮の後見を源氏に託す。ただし、娘を決して恋の相手として考えないでほしいと念を押す。源氏は心外に思いながらも承知する。暗くなった部屋で、源氏は几帳のほころびから、尼姿の御息所と、悲しげに頬杖をつく斎宮の姿をかいま見る。御息所の容体は悪化し、源氏は後見を約束して帰る。

- 1かくかくかくまでまでまでおぼしおぼしおぼしとゞめとゞめとどめたりたりたりけるけるけるををを女女おんなもももよろづよろづよろずにににあはれあはれあわれにににおぼえおぼえおぼえててて齋宮齋宮さいぐうののの御御おん事事ことをををぞぞぞ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。「「「心心こころ細細ぼそくくくてててとまりとまりとまり給給たまははわむむんををを必必かならずずず事事ことににに觸觸ふれれれてててかずまへかずまへかずまえ聞聞きこえええ給給たまへへえ。。。またまたまたみゆづるみゆづるみゆずる人人ひともももなくなくなくたぐひたぐひたぐいなきなきなき御御おん有樣有樣ありさまににになむなむなん。。。
- 2かひかひかいなきなきなき身身みながらながらながらももも今今いま暫暫しばししし世世よののの中中なかををを思思おもひひいのどむるのどむるのどむる程程ほどはははとざまかうざまとざまかうざまとざまこうざまににに物物ものをををおぼしおぼしおぼし知知しるるるまでまでまで見見み奉奉たてまつらららむむんとととこそこそこそ思思おもひひい給給たまへへえつれつれつれ」」」とととてててももも消消きえええ入入いりりりつゝつゝつつ泣泣なききき給給たまふふう。。。
- 3「「「かゝるかゝるかかる御御おん事事ことなくなくなくてててだにだにだに思思おもひひい放放はなちちち聞聞きこえええさすさすさすべきべきべきにににもももあらあらあらぬぬぬををを、、、ましてましてまして心心こころののの及及およばばばむむんににに從從したがひひいてててははは何事何事なにごともももうしろみうしろみうしろみ聞聞きこえええむむんとととなむなむなん思思おもひひい給給たまふるふるうる。。。更更さらににに後後うしろめたくめたくめたくななな思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまひひいそそそ」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、
- 4「「「いといといと難難かたきききことことこと誠誠まことにににうちうちうち賴賴たのむむむべきべきべき親親おやなどなどなどにてにてにてみゆづるみゆづるみゆずる人人ひとだにだにだに女女おんなおやおやおやににに離離はなれれれぬるぬるぬるはははいといといとあはれあはれあわれなるなるなることことことにににこそこそこそ侍侍はべるるるめれめれめれ。。。ましてましてまして思思おもほしほしおし人人ひとめかさめかさめかさむむんにににつけつけつけてててもももあぢきなきあぢきなきあじきなきかたかたかたやややうちうちうちまじりまじりまじり人人ひとににに心心こころももも置置おかかかれれれ給給たまははわむむん。。。
- 5うたてうたてうたてあるあるある思思おもひひいやりやりやりごとごとごとなれなれなれどどどかけてかけてかけてさやうさやうさようののの世世よづいづいずいたるたるたるすぢすぢすじにににおぼしおぼしおぼしよるよるよるななな。。。うきうきうき身身みをををつみつみつみ侍侍はべるるるにににももも女女おんなははは思思おもいのののほかほかほかにてにてにて物思物思ものおもひひいをををそふるそふるそうるものものものににになむなむなん侍侍はべりりりけれけれければばばいかでいかでいかでさるさるさるかたかたかたをををもてもてもてはなれはなれはなれててて見見み奉奉たてまつらららむむんととと思思おもひひい給給たまふるふるうる」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、
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- 7とととははは暗暗くろうううなりなりなり內內うちははは大大おおとなぶらとなぶらとなぶらほのかほのかほのかににに物物ものよりよりより通通とおりりりててて見見みゆるゆるゆるををを、、、もしももしももしもやややとととおぼえおぼえおぼえてててやをらやをらやおら御御おん几帳几帳きちょうのののほころびほころびほころびよりよりより見見み給給たまへへえばばば、、、心心こころもとなきもとなきもとなき程程ほどののの火影火影ほかげににに、、、御御おんぐしぐしぐしいといといとをかしげをかしげおかしげににに花花はなやかやかやかにににそぎそぎそぎててて寄寄よりりり居居い給給たまへへえるるる、、、繪繪えににに書書かきききたらたらたらむむんさまさまさましししててていみじういみじういみじゅうあはれあはれあわれなりなりなり。。。
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現代語訳
こうまで心にかけてくださっていたのを、女(御息所)も何かとしみじみとありがたく思われて、斎宮のことをお頼み申し上げなさる。「心細い身で後に残られるのを、必ず何かにつけて人並みにお世話してあげてください。ほかに後を託す人もなく、比べるもののないほど寂しいご様子なのです。かいのない身ながらも、もうしばらく生きながらえる間は、あれこれと物事がおわかりになるまでお世話申し上げようと思っておりましたのに」と言っても、息も絶えそうにお泣きになる。
源氏は「こういうお頼みがなくてさえ、お見捨て申し上げるはずもないのに、まして私の心の及ぶ限りは、何事もお世話申し上げようと存じます。決してご心配なさいますな」などと申し上げなさると、御息所は「たいそう難しいことです。本当に頼りになる親などがいて後を託す人さえ、女親に先立たれた娘は、たいそうかわいそうなことでございます。まして、あなたが思い人のようにお扱いになるにつけても、つまらないことが混じって、ほかの方々に疎まれなさることでしょう。
いやな邪推ではございますが、決してそのような色恋めいたことはお考えくださいますな。つらい我が身をつねって思い知るにつけても、女は思いもよらないことで物思いを重ねるものでございますので、どうにかしてそのような方面とは関わりなくお世話していただきたいと存じます」などと申し上げなさるので、源氏は、つまらないことをおっしゃるものだとお思いになるが、「長年、何事もわきまえるようになりましたのに、昔の浮気心の名残があるかのようにおっしゃるのも心外です。まあ、そのうちおわかりになるでしょう」と言って、
外は暗くなり、内は大殿油がほのかに物越しに透けて見えるので、もしかしたらと思われて、そっと御几帳のほころびからご覧になると、心細いほどの灯火の光に、御髪をたいそう美しく、華やかに尼削ぎにして、寄りかかっていらっしゃる様子が、絵に描いたようで、たいそうしみじみとしている。帳台の東側に添い臥していらっしゃるのが、斎宮なのだろう。御几帳が無造作に引きのけられている所から、お目をとめて見通しなさると、頬杖をついて、たいそう悲しいとお思いになっている様子である。わずかに見えるだけだが、たいそうかわいらしいだろうと見える。
御髪のかかっている具合や、頭の形、雰囲気は、上品で気高いものの、小柄で愛嬌がおありの様子がはっきりとお見えになるので、源氏は、心もとなく見たいにつけても、あれほどおっしゃっているのだからと思い返しなさる。
御息所は「たいそう苦しさがまさってまいります。畏れ多いので、早くお帰りくださいませ」と言って、女房に抱きかかえられて横におなりになる。源氏は「お近くに参上したかいがあって、少しでもよくおなりになればうれしいのですが、おいたわしいことです。どのようなご気分ですか」と言って、のぞき込みなさる様子なので、「たいそう恐ろしいほどでございます。乱れた心地がこのように限りという折に、お訪ねくださったのは、まことに浅からぬご縁でございます。思っていることを少しでも申し上げましたので、いくら何でもと頼もしく存じます」などと申し上げさせなさる。
源氏は「このようなご遺言の相手にお思いくださったのも、いっそうしみじみとありがたいことです。故院の皇子たちは大勢いらっしゃいますが、親しくお付き合いする方はほとんどいないので、故院が斎宮を同じ皇女たちの中に数え入れていらっしゃったのですから、そのように頼りにしていただきましょう。私も少し大人びた年齢になりましたのに、世話をする子もいないので物足りなく思っておりましたから」などと申し上げてお帰りになった。
意訳
六条御息所は、娘の前斎宮の後見を源氏に託すが、娘を決して恋の相手として考えないでほしいと念を押す。源氏は心外に思いながらも承知する。
源氏は几帳のほころびから、尼姿の御息所と、悲しげに頬杖をつく斎宮の姿をかいま見て、心を引かれるが、御息所の言葉を思い返す。御息所の容体は悪化し、源氏は斎宮の後見を約束して帰る。
語釈・文法注
- ちやう
- 帳台(ちょうだい)。寝所や座所として用いる、四方に帳を垂らした台。
- ひぢゝかに
- 小柄でかわいらしい様子をいう語。
文法
- 禁止の「な…そ」(後めたくな思ひ聞え給ひそ)
- 「ご心配なさいますな」。
- 禁止の「な」(おぼしよるな)
- 「お考えくださいますな」。終止形につく禁止の終助詞。
解説
六条御息所の遺言は、娘を源氏の恋の相手にしないでほしいという、痛切な願いを含んでいる。自らが源氏との恋に苦しんだ経験から、娘に同じ思いをさせたくないという母の思いである。
源氏はこの遺言を守り、前斎宮を養女として冷泉帝に入内させる道を選ぶ。のちの秋好中宮である。しかし、源氏が斎宮に心を引かれる気持ちは消えず、のちの薄雲・朝顔の巻などでも、その心の揺れが描かれる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、298–301頁(コマ152–153)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日