新古今和歌集 巻第十 羇旅歌 930番
見し人も
見慣れた人も訪ねてこない、十府の浦風の音もしないのに、何事もないように澄んでいる秋の夜の月よ。
場面イラスト(準備中)
現代語訳
〔詞書〕陸奥の国におりましたころ、八月十五夜に京を思い出して、大宮の女房のもとに贈った歌。
見慣れた人も訪ねてこない、十府の浦風の音もしないのに、何事もないように澄んでいる秋の夜の月よ。
意訳
親しかった都の人々も便りをくれず、十府の浦の浦風も音を立てない。それなのに、秋の夜の月だけは、そしらぬ顔で澄みわたっている。
語釈・文法注
- とふの浦
- 陸奥国の歌枕。十府の浦。「訪ふ」を掛ける。
- つれなく
- 平然と。
和歌
- 作者
- 橘為仲(たちばなのためなか) ?–1085
橘義通の子。陸奥守などを務めた。和歌六人党の一人。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第十・羇旅歌・930番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「みちの國に侍りける頃、八月十五夜に京を思ひ出て、大宮の女房の許につかはしける」(陸奥の国におりましたころ、八月十五夜に京を思い出して、大宮の女房のもとに贈った歌)。
修辞
- 掛詞
- 「とふ」に「訪ふ」と「十府」。
- 体言止め
- 体言止め。
解説
為仲の歌。大宮は後冷泉天皇の皇后寛子。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、170頁(コマ95)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日