古典ライブラリー

新古今和歌集 巻第三 夏歌 258番

掬ぶ手に

慈円(じえん)

すくい上げる手に月の影が乱れていく山の井で、満ち足りないうちに、月は傾いてしまったことだ。

作者
前大僧正慈圓(慈円)
  1. 1五十首ごじつしゆ五十首ごじつしゆごじっしゅののの歌うた歌うたうた奉たてまつ奉たてまつたてまつりしときりしときりしとき詞書
  2. 2掬むす掬むすむすぶぶぶ手て手ててににに初句
  3. 3影かげ影かげかげ亂みだ亂みだみだれゆくれゆくれゆく二句
  4. 4山やま山やまやまののの井ゐ井ゐいののの三句
  5. 5あかでもあかでもあかでも月つき月つきつきののの四句
  6. 6傾かたぶ傾かたぶかたぶきにけりきにけりきにけり結句

引用の仕方

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現代語訳

〔詞書〕五十首歌を献上した時の歌。

すくい上げる手に月の影が乱れていく山の井で、満ち足りないうちに、月は傾いてしまったことだ。

意訳

山の湧き水を手ですくうと、水に映った月の影が揺れて乱れる。その月を十分に楽しまないうちに、月は西に傾いてしまった。

語釈・文法注

掬ぶ
手で水をすくう。
山の井
山の湧き水。
あかでも
満ち足りないうちに。

和歌

作者
慈円(じえん) 1155–1225
関白藤原忠通の子で、九条兼実の弟、良経の叔父。天台座主を四度務めた。歴史書『愚管抄』を著した。率直で多彩な歌風で、『新古今和歌集』に西行に次ぐ九十二首が入る。家集に『拾玉集』がある。
出典
『新古今和歌集』巻第三・夏歌・258番
歌体
短歌
状況
詞書「五十首の歌奉りしとき」(五十首歌を献上した時の歌)。

修辞

本歌取り
「むすぶ手のしづくに濁る山の井のあかでも人に別れぬるかな」(貫之、古今集)をふまえる。

解説

慈円の歌。底本は結句を「傾きにけり」とするが、「傾きにける」とする本もある。

関連

出典

底本
『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、46頁(コマ33)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日