新古今和歌集 巻第一 春歌上 86番
吉野山
吉野山では、去年つけておいた枝折の道を変えて、まだ見たことのない方の花を訪ねて行こう。

現代語訳
〔詞書〕花の歌として詠みました歌。
吉野山では、去年つけておいた枝折の道を変えて、まだ見たことのない方の花を訪ねて行こう。
意訳
去年吉野山に入った時は、帰り道のしるしに枝を折っておいた。今年はその道をやめて、まだ見たことのない方面の桜を探しに行こう。桜を求めて山に分け入る西行の心がよく表れている。
語釈・文法注
- 枝折
- 山道で、帰りのしるしに木の枝を折っておくこと。また、その道しるべ。
- 尋ねむ
- 訪ねよう。「む」は意志。
和歌
- 作者
- 西行法師(さいぎょうほうし) 1118–1190
俗名は佐藤義清(のりきよ)。鳥羽院の北面の武士だったが、二十三歳で出家し、諸国を旅して歌を詠んだ。自然と人生の哀感を率直に詠み、『新古今和歌集』に最も多い九十四首が入る。家集に『山家集』がある。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・86番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「花の歌とてよみ侍りける」(花の歌として詠みました歌)。
解説
西行の代表作の一つ。花を求めて毎年吉野山の奥へと分け入る姿に、花に魅入られた西行の生き方が重なる。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、16頁(コマ18)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日