新古今和歌集 巻第一 春歌上 7番
岩間とぢし
岩の間を閉ざしていた氷も、今朝は解けはじめて、苔の下を流れる水は、流れる道を探し求めていることだろう。

現代語訳
岩の間を閉ざしていた氷も、今朝は解けはじめて、苔の下を流れる水は、流れる道を探し求めていることだろう。
意訳
冬の間、岩間を閉ざしていた氷が、立春の朝から解けはじめた。苔の下を細く流れ出した水が、自分の通る道を探しているかのようだと思いやる。目に見えない小さな水の動きに、春の訪れを感じている。
語釈・文法注
- とぢし
- 「し」は過去の助動詞「き」の連体形。
- とけそめて
- 「そむ」は「〜しはじめる」意。
- みちもとむらむ
- 「らむ」は現在推量の助動詞。今ごろ道を探していることだろう。
和歌
- 作者
- 西行法師(さいぎょうほうし) 1118–1190
俗名は佐藤義清(のりきよ)。鳥羽院の北面の武士だったが、二十三歳で出家し、諸国を旅して歌を詠んだ。自然と人生の哀感を率直に詠み、『新古今和歌集』に最も多い九十四首が入る。家集に『山家集』がある。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・7番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 題しらず(詠まれた事情は伝わらない)。
修辞
- 擬人法
- 苔の下の水が道を「もとむ」と、人のように表す。
解説
作者の西行は諸国を旅した僧侶歌人で、『新古今和歌集』に最も多くの歌が入る。山中で暮らす人の目で、雪どけの水の動きを細やかにとらえている。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、2頁(コマ11)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日