古典ライブラリー

万葉集 巻第二十 4491番

大き海の 水底深く

石川女郎(いしかわのいらつめ)

藤原宿奈麻呂の妻石川女郎が、夫の愛が薄れて離別されたことを悲しんで作った歌。大海の水底のように深く思いながら、裳の裾を引いて歩きなれた菅原の里よという歌。

大海の深い水底と、菅原の里の道

題詞(藤原宿奈麻呂朝臣の妻石川女郎の歌一首)

  1. 1大おほ大おほおおききき海うみ海うみうみののの於保吉宇美能
  2. 2水底みなそこ水底みなそこみなそこ深ふか深ふかふかくくく美奈曾己布可久
  3. 3思おも思おもおもひひいつつつつつつ於毛比都々
  4. 4裳も裳もも引び引びびきききならしならしならしししし毛婢伎奈良之思
  5. 5菅原すがはら菅原すがはらすがわらののの里さと里さとさと須我波良能佐刀

引用の仕方

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現代語訳

大海の水底のように深く思いながら、裳の裾を引いて歩きなれた、菅原の里よ。

意訳

深く夫を思って暮らした菅原の里を、離別された今、悲しみをこめて振り返った歌である。

語釈・文法注

文法・本文

大き海の水底深く
大海の水底のように深く。
裳引きならしし
裳の裾を引いて、踏みならした。通い慣れた。
菅原の里
大和国添下郡の地。今の奈良市菅原町。

和歌

作者
石川女郎(7世紀後半〜8世紀初め)
大津皇子の宮に仕えた女性。大伴宿奈麻呂(大伴安麻呂の子)にこの歌を贈った。
出典
『万葉集』巻第二十・部立なし・4491番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
藤原宿奈麻呂の妻石川女郎が、夫に離別された悲しみを詠んだ歌。

修辞

比喩
思いの深さを大海の水底にたとえる。
体言止め
「菅原の里」で結ぶ。

解説

藤原宿奈麻呂はのちの藤原良継。左注によれば、大原今城の家の宴で伝えられた歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、749頁(コマ167)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、885頁(コマ206)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日