万葉集 巻第二十 4488〜4490番
み雪降る 冬は今日のみ
天平宝字元年12月18日、大監物三形王の家で宴をした時の歌三首。雪の降る冬は今日だけで、鶯の鳴く春は明日であるらしいという主人三形王の歌、春が近いからか今夜の月は霞んでいるのだろうという甘南備伊香の歌、年が改まって春になったら、まず我が家で鶯よ鳴けという大伴家持の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞十二月十八日、大監物三形王の宅にて宴せる歌三首
- 1みみみ雪雪ゆき降降ふるるる三雪布流4488 三形王
- 2冬冬ふゆははは今日今日きょうのみのみのみ布由波祁布能未
- 3鶯鶯うぐいすののの鶯之
- 4鳴鳴なかかかむむん春春はるべべべははは奈加牟春敝波
- 5明日明日あすにににしししあるあるあるらしらしらし安須爾之安流良之
- 6うちうちうち靡靡なびくくく宇知奈婢久4489 甘南備伊香
- 7春春はるををを近近ちかみみみかかか波流乎知可美加
- 8ぬばたまぬばたまぬばたまののの奴婆玉乃
- 9今宵今宵こよいののの月夜月夜つくよ己與比能都久欲
- 10霞霞かすみみみたるたるたるらむらむらん可須美多流良牟
- 11あらたまあらたまあらたまののの安良多末能4490 家持
- 12年年とし行行ゆききき還還かえりりり等之由伎我敝理
- 13春春はる立立たたたたばばば波流多多婆
- 14まづまづまず我我わががが宿宿やどににに末豆和我夜度爾
- 15鶯鶯うぐいすははは鳴鳴なけけけ宇具比須波奈家
現代語訳
〔4488〕雪の降る冬は今日だけで、鶯の鳴く春は、明日であるらしい。
〔4489〕(うち靡く)春が近いからか、(ぬばたまの)今夜の月は、霞んでいるのだろう。
〔4490〕(あらたまの)年が行き改まって春になったら、まず我が家で、鶯よ鳴け。
意訳
立春を翌日に控えた年内の宴で、迫る春を待つ心を三人がそれぞれに詠んだ歌である。
語釈・文法注
文法・本文
- 今日のみ
- 今日だけ。翌日が立春であったことによる。
- うち靡く
- 「春」にかかる枕詞。
- 春を近みか
- 春が近いからか。
- 年行き還り
- 年が改まって。
- 春立たば
- 春になったら。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第二十・部立なし・4488〜4490番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平宝字元年12月18日、三形王の家での宴の歌。翌日が立春であった。
修辞
- 枕詞
- 「うち靡く」「ぬばたまの」「あらたまの」。
解説
年内立春の前日の宴で、冬と春の境を詠む。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、749頁(コマ167)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、885頁(コマ206)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日