万葉集 巻第二十 4442〜4444番
我が兄子が 宿のなでしこ
天平勝宝7年5月9日、大伴家持の家に集まって飲んだ時の歌四首のうち三首。あなたの家のなでしこは、毎日雨が降っても色も変わらないという大原今城の歌、雨が降りしきってなでしこがいよいよ初花のように恋しいあなたよという家持の歌、あなたの家の萩の咲く秋の夕べには私を偲んでくださいという今城の歌。
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題詞五月九日、兵部少輔大伴宿禰家持の宅に集飮せる歌四首
- 1我我わががが兄子兄子せこががが和我勢故我4442 大原今城
- 2宿宿やどのののなでしこなでしこなでしこ夜度乃奈弖之故
- 3日日ひ並並ならべべべててて比奈良倍弖
- 4雨雨あめははは降降ふれれれどもどもども安米波布禮杼母
- 5色色いろももも變變かわらららずずず伊呂毛可波良受
- 6ひさかたひさかたひさかたののの比佐可多乃4443 家持
- 7雨雨あめははは降降ふりりりしくしくしく安米波布里之久
- 8瞿麥瞿麥なでしこががが奈弖之故我
- 9いやいやいや初初はつ花花はなににに伊夜波都波奈爾
- 10戀戀こいしきしきしき我我わががが兄兄せ故非之伎和我勢
- 11我我わががが兄子兄子せこががが和我世故我4444 大原今城
- 12宿宿やどなるなるなる萩萩はぎののの夜度奈流波疑乃
- 13花花はな咲咲さかかかむむん波奈佐可牟
- 14秋秋あきのののゆふべゆふべゆうべははは安伎能由布弊波
- 15我我われををを偲偲しぬばばばせせせ和禮乎之努波世
現代語訳
〔4442〕あなたの家のなでしこは、幾日も続けて雨が降っても、色も変わらないことです。
〔4443〕(ひさかたの)雨が降りしきって、なでしこがいよいよ初花のように新鮮で、恋しく思うあなたですよ。
〔4444〕あなたの家の萩の花が咲く秋の夕べには、私のことを偲んでください。
意訳
家持の家のなでしこを題に、客の今城と主人の家持が互いの変わらぬ親しみを詠み交わした歌である。
語釈・文法注
文法・本文
- 日並べて
- 幾日も続けて。
- 降りしく
- 降りしきる。
- いや初花に
- いよいよ初花のように。
- 偲ばせ
- 偲んでください。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第二十・部立なし・4442〜4444番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 5月9日、家持の家での宴の歌。
修辞
- 枕詞
- 「ひさかたの」が「雨」にかかる。
- 贈答
- 客の今城と主人の家持が詠み交わす。
解説
家持は難波での防人の検校を終えて都に戻っていた。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、740頁(コマ163)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、874頁(コマ201)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日