万葉集 巻第二十 4433〜4435番
朝なさな 揚る雲雀に
天平勝宝7年3月3日、防人を検校する勅使と兵部省の使人たちが集まった宴の歌三首。毎朝空に揚がる雲雀になりたい、都へ行ってすぐに帰って来ようという勅使安倍沙美麻呂の歌、雲雀の揚がる春がはっきりと来たので、都も見えないほど霞がたなびいているという大伴家持の歌、つぼみの花の咲き初めに来た私は、花が散った後に都へ帰るのだろうかという家持の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞三月三日、防人を撿挍する勅使、并に兵部使人等、同に集へる飲宴に作れる歌三首
- 1朝朝あさなさななさななさな阿佐奈佐奈4433 安倍沙美麻呂
- 2揚揚あがるるる雲雀雲雀ひばりににに安我流比婆理爾
- 3なりなりなりてててしかしかしか奈里弖之可
- 4都都みやこににに行行ゆきききててて美也古爾由伎弖
- 5はやはやはや歸歸かえりりり來來こむむむ波夜加弊里許牟
- 6雲雀雲雀ひばりあがるあがるあがる比婆里安我流4434 家持
- 7春春はるべべべとととさやさやさやににに波流弊等佐夜爾
- 8なりなりなりぬれぬれぬればばば奈理奴禮波
- 9都都みやこももも見見みえええずずず美夜古母美要受
- 10霞霞かすみたなびくたなびくたなびく可須美多奈妣久
- 11含含ふふめめめりりりししし布敷賣里之4435 家持
- 12花花はなののの初初はじめめめににに波奈乃波自米爾
- 13來來こししし吾吾われややや許之和禮夜
- 14散散ちりりりなななむむん後後のちににに知里奈牟能知爾
- 15都都みやこへへえ行行ゆかかかむむん美夜古敝由可無
現代語訳
〔4433〕毎朝空に揚がる雲雀になりたいものだ。都に行って、すぐに帰って来よう。
〔4434〕雲雀の揚がる春の季節に、はっきりとなったので、都も見えないほど霞がたなびいている。
〔4435〕つぼみだった花の咲き初めにやって来た私は、花が散ってしまった後に、都へ帰るのだろうか。
意訳
防人の検校のために難波に来て一月あまり、春も深まった上巳の宴で、都を恋しく思う心を詠んだ歌である。
語釈・文法注
文法・本文
- 朝なさな
- 毎朝。
- なりてしか
- なりたいものだ。
- 春べ
- 春のころ。
- 含めりし
- 「ふふめりし」。つぼみだった。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第二十・部立なし・4433〜4435番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平勝宝7年3月3日、防人を検校する勅使と兵部の使人らが難波で集まった宴の歌。
修辞
- 対照
- 4435番で、花の咲き初めと散った後とを対照させる。
解説
家持は2月初めに難波に来て、防人の検校にあたっていた。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、739頁(コマ162)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、873頁(コマ200)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日