万葉集 巻第二十 4328〜4330番
大君の 命かしこみ
天平勝宝7年2月、相模国の防人たちの歌三首。大君の命令を恐れ謹んで、岩に触れながら海原を渡る、父母を残してという歌、多くの国の防人が難波に集まって船飾りをする日の私の姿を見る人がいればよいという歌、難波の港で装いに装って今日出て行くのか、見送る母もないのにという歌。
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題詞(相模國の防人の歌)
- 1大君大君おおきみののの於保吉美能4328 丈部人麻呂
- 2命命みことかしこみかしこみかしこみ美許等可之古美
- 3磯磯いそににに觸觸ふりりり伊蘇爾布理
- 4海原海原うのはら渡渡わたるるる宇乃波良和多流
- 5父母父母ちちははををを置置おきききててて知知波波乎於伎弖
- 6八十八十やそ國國くにははは夜蘇久爾波4329 丹比部国人
- 7難波難波なにわににに集集つどひひい那爾波爾都度比
- 8舟舟ふな飾飾かざり布奈可射里
- 9我我あがががせせせむむん日日ひろろろををを安我世武比呂乎
- 10見見みももも人人ひともももがもがもがも美毛比等母我母
- 11難波難波なにわ津津づににに奈爾波都爾4330 丸子多麻呂
- 12裝裝よそひひい裝裝よそひひいててて余曾比余曾比弖
- 13今日今日きょうののの日日ひややや氣布能日夜
- 14出出いでででててて罷罷まからららむむん伊田弖麻可良武
- 15見見みるるる母母ははなしなしなしににに美流波波奈之爾
現代語訳
〔4328〕大君のご命令を恐れ謹んで、岩に触れながら海原を渡っていく。父母を後に残して。
〔4329〕多くの国の防人が難波に集まって、船飾りを私がする日の姿を、見てくれる人がいればよいのに。
〔4330〕難波の港で装いに装って、今日の日に出て行くのだろうか。見送ってくれる母もいないのに。
意訳
相模国の防人たちが、難波で船出を前にして、残してきた父母や、晴れの船出を見てくれる人のいない寂しさを詠んだ歌である。
語釈・文法注
文法・本文
- 磯に觸り
- 岩に触れながら。
- 海原
- 「うのはら」。うなはらの東国語形。
- 八十國
- 多くの国。
- 日ろ
- 「ひろ」。日。「ろ」は東国語の接尾語。
- 見も人
- 「みもひと」。見る人。東国語形。
- 罷らむ
- 出て行くのだろうか。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第二十・部立なし・4328〜4330番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平勝宝7年2月、相模国の防人たちが詠み、防人部領使が進上した歌。
修辞
- 東国方言
- 「うのはら」「日ろ」「見も」などの東国語を交える。
解説
相模国の歌は八首のうち三首が採られた。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、722頁(コマ154)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、849頁(コマ188)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日