万葉集 巻第二十 4298〜4300番
霜の上に 霰たばしり
天平勝宝6年正月4日、大伴氏一族の人々が少納言大伴家持の家に年賀に集まって宴をしたときの歌三首。霜の上に霰が飛び散るように、ますます繁く私は参上しよう、いつまでもという大伴千室の歌、年月は改まるたびに新しく顔を合わせるけれど、私の思うあなたは見飽きないという大伴村上の歌、霞の立つ春の初めを今日のように見ようと思えば楽しいことだという大伴池主の歌。
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題詞六年正月四日、氏族の人等、少納言大伴宿禰家持の宅に賀ぎ集ひて宴飲せる歌三首
- 1霜霜しもののの上上うえににに霜上爾4298 千室
- 2霰霰あられたばしりたばしりたばしり安良禮多婆之里
- 3いやいやいや增增ましししににに伊夜麻之爾
- 4吾吾あれははは參來參來まいこむむん安禮波麻爲許牟
- 5年年としののの緒緒お長長ながくくく年緒奈我久
- 6年年とし月月つきははは年月波4299 村上
- 7新新あらたあらたたあらたたあらたににに安良多安良多爾
- 8相相あい見見みれれれどどど安比美禮騰
- 9我我あががが思思もふふう君君きみははは安我毛布伎美波
- 10飽飽あききき足足たらららぬぬぬかもかもかも安伎太良奴可母
- 11霞霞かすみ立立たつつつ可須美多都4300 池主
- 12春春はるのののはじめはじめはじめををを春初乎
- 13今日今日きょうのののごとごとごと家布能其等
- 14見見みむむむととと思思おもへへえばばば見牟登於毛倍波
- 15樂樂たぬしししとととぞぞぞ思思もふふう多努之等曾毛布
現代語訳
〔4298〕霜の上に霰が飛び散るように、ますます繁く私は参上しましょう。いつまでも長く。
〔4299〕年月は改まるたびに新しく顔を合わせるけれど、私の慕うあなたは、いくら見ても見飽きないことだ。
〔4300〕霞の立つ春の初めを、今日のようにいつまでも迎えようと思うと、楽しいことだと思う。
意訳
新年に大伴氏の人々が氏の長である家持の家に年賀に集まった宴の歌である。一族の人々が、繁く参上すること、見飽きない主人への敬慕、新春を共に迎える喜びを詠む。
語釈・文法注
文法・本文
- たばしり
- 激しく飛び散って。
- 參來む
- 「まゐこむ」。参上しよう。
- 年の緒長く
- いつまでも長く。
- 新あらたに
- 新しく新しく。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第二十・部立なし・4298〜4300番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平勝宝6年正月4日、大伴氏の人々が少納言大伴家持の家に年賀に集まった宴の歌。
修辞
- ことほぎ
- 新年と一族の繁栄を祝う。
解説
家持はこのころ大伴氏の氏上の立場にあった。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、718頁(コマ152)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、844頁(コマ186)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日