古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4262〜4263番

韓國に 往き足らはして

作者未詳

天平勝宝4年閏3月、衛門督大伴古慈悲の家で、遣唐副使大伴古麻呂らを送った宴の歌二首。唐の国で務めを十分に果たして帰って来る、ますらおの勇士に御酒を差し上げるという多治比鷹主の歌と、櫛も見まい、家の中も掃くまい、旅行く君の無事を祈ると思ってという作者未詳の歌。

遣唐使の旅立ちを祝う大伴氏の宴

題詞閏三月、衞門督大伴古慈悲宿禰の家にて、入唐副使同じき胡麿宿禰等を餞せる歌二首

  1. 1韓國からくに韓國からくにからくにににに韓國爾4262 多治比鷹主
  2. 2往ゆ往ゆゆききき足た足たたらはしらはしらわしててて由伎多良波之氐
  3. 3歸かへ歸かへかえりりり來こ來ここむむむ可敝里許牟
  4. 4丈夫ますら丈夫ますらますら武雄たけを武雄たけをたけおににに麻須良多家乎爾
  5. 5御酒みき御酒みきみきたてまつるたてまつるたてまつる美伎多氐麻都流
  6. 6梳くし梳くしくしももも見み見みみじじじ梳毛見自4263 作者未詳
  7. 7屋中やぬち屋中やぬちやぬちももも掃は掃ははかかかじじじ屋中毛波可自
  8. 8草くさ草くさくさ枕まくら枕まくらまくら久左麻久良
  9. 9旅たび旅たびたび行ゆ行ゆゆくくく君きみ君きみきみををを多婢由久伎美乎
  10. 10齋いは齋いはいわふふうととと思おも思おもおもひひいててて伊波布等毛比氐

引用の仕方

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現代語訳

〔4262〕唐の国に行って務めを十分に果たして帰って来る、ますらおの勇士に、御酒を差し上げます。

〔4263〕櫛も手に取るまい。家の中も掃くまい。(草枕)旅に行くあなたの無事を、慎んで祈ると思って。

意訳

遣唐副使となった大伴古麻呂の門出を祝う宴の歌である。鷹主は無事に使命を果たして帰る勇士に酒を捧げ、もう一首は、旅人の無事を祈って身を慎む留守の者の心を詠む。

語釈・文法注

文法・本文

往き足らはして
行って務めを十分に果たして。
武雄
「たけを」。勇士。
梳も見じ
櫛も使うまい。旅人の無事を祈る物忌み。
屋中
「やぬち」。家の中。
齋ふ
「いはふ」。身を慎んで祈る。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4262〜4263番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝4年閏3月、衛門督大伴古慈悲の家で、遣唐副使大伴古麻呂らを送った宴の歌。

修辞

物忌み
旅人の無事を祈る習俗を詠む。

解説

旅人の留守中に家の者が髪を梳かず、家を掃かずに身を慎む習俗があった。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、701頁(コマ143)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、827頁(コマ177)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日