古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4252〜4253番

君が家に 植ゑたる萩の

作者未詳

天平勝宝3年8月、都から越中へ戻る久米広縄と、都へ上る大伴家持が、越前の大伴池主の館で偶然出会って共に宴をしたときの歌二首。あなたの家に植えた萩の初花を折って髪に挿そう、旅で別れ別れになる仲間同士という広縄の歌と、立ったり座ったりして待ちかねて出て来たあなたに、ここで出会って髪に挿した萩よという家持の歌。

越前の館で萩の花を髪に挿して再会を喜ぶ官人たち

題詞正税帳使掾久米朝臣廣繩、事畢へて任に退る。適 越前國掾大伴宿禰池主の館に遇ひ、仍りて共に飲樂す。時に久米朝臣廣繩、芽子の花を矚て作れる歌一首・大伴宿禰家持の和ふる歌一首

  1. 1君きみ君きみきみががが家いへ家いへいえににに君之家爾4252 広縄
  2. 2植う植ううゑゑえたるたるたる萩はぎ萩はぎはぎののの殖有芽子之
  3. 3初はつ初はつはつ花はな花はなはなををを始花乎
  4. 4折を折をおりりりててて插頭かざ插頭かざかざさささななな折而插頭奈
  5. 5旅たび旅たびたび別わか別わかわかるるるどちどちどち客別度知
  6. 6立た立たたちちちててて居ゐ居ゐいててて立而居而4253 家持
  7. 7待ま待ままてててどどど待ま待ままちちち兼か兼かかねねね待登待可禰
  8. 8出い出いいでででててて來こ來ここししし伊泥氐來之
  9. 9君きみ君きみきみににに此處ここ此處ここここににに遇あ遇ああひひい君爾於是相
  10. 10插頭かざ插頭かざかざしししつるつるつる萩はぎ萩はぎはぎ插頭都流波疑

引用の仕方

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現代語訳

〔4252〕あなたの家に植えてある萩の初花を折って、髪に挿そう。旅で別れ別れになる仲間同士で。

〔4253〕立ったり座ったりして待ちかねて出て来たあなたに、ここで出会って、髪に挿した萩であるよ。

意訳

都から戻る広縄と、都へ向かう家持が、越前の池主の館で偶然に出会った喜びの歌である。かつて越中で共に過ごした三人が、萩の初花を髪に挿して、つかの間の再会を楽しんだ。

語釈・文法注

文法・本文

插頭さな
「かざさな」。髪に挿そう。
旅別るどち
旅の途中で別れる仲間。
立ちて居て
立ったり座ったりして、落ち着かずに。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4252〜4253番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝3年8月、越前国掾大伴池主の館で、久米広縄と大伴家持が出会ったときの歌。

修辞

贈答
4253番が4252番の萩を受けて答える。

解説

越中の家持・池主・広縄の三人がそろった最後の機会と見られる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、699頁(コマ142)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、825頁(コマ176)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日