古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4235番

天雲を ほろに踏みあたし

県犬養三千代(あがたのいぬかいのみちよ)

太政大臣藤原不比等の家の県犬養命婦(三千代)が天皇に奉った歌で、久米広縄が伝え誦んだもの。天雲を踏み散らして鳴る雷神も、今日の恐れ多さにまさって恐ろしいことがあろうかという歌。

雷の鳴る天雲の下、宮中に参上する女官

題詞太政大臣藤原家の縣犬養命婦、天皇に奉れる歌一首

  1. 1天あま天あまあま雲くも雲くもくもををを天雲乎
  2. 2ほろほろほろににに踏ふ踏ふふみみみあたしあたしあたし富呂爾布美安多之
  3. 3鳴神なるかみ鳴神なるかみなるかみももも鳴神毛
  4. 4今日けふ今日けふきょうににに益まさ益まさまさりりりててて今日爾益而
  5. 5恐かしこ恐かしこかしこけけけめめめやもやもやも可之古家米也母

引用の仕方

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現代語訳

天雲をばらばらに踏み散らして鳴る雷神も、今日にまさって恐れ多いことがあろうか。

意訳

天皇の前に召された恐れ多さを、天雲を踏み散らす雷神の恐ろしさにもまさると詠んだ歌である。

語釈・文法注

文法・本文

ほろに
ばらばらに。
踏みあたし
踏み散らして。
鳴神
「なるかみ」。雷。
恐けめやも
恐ろしいことがあろうか。

和歌

作者
県犬養三千代(?–733)
宮中に仕えた女官で、はじめ美努王に嫁して葛城王(橘諸兄)らを生み、のち藤原不比等の妻となって光明皇后を生んだ。元明天皇から橘の姓を賜った。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4235番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
県犬養命婦が天皇に奉った歌を、のちに久米広縄が越中で伝え誦んだもの。

修辞

比較
雷神の恐ろしさと比べて、天皇の前の恐れ多さを強調する。

解説

県犬養三千代は藤原不比等の妻で、光明皇后・橘諸兄の母。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、695頁(コマ140)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、821頁(コマ174)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日