万葉集 巻第十九 4233〜4234番
うち羽振き 鷄は鳴くとも
同じ宴で、酒もたけなわに夜が更けて鶏が鳴いたので、主人の内蔵縄麻呂が詠んだ歌と、大伴家持が答えた歌。羽ばたいて鶏が鳴いても、これほど降り敷いた雪の中をあなたはお帰りになれましょうかという縄麻呂の歌と、鳴く鶏はしきりに鳴くけれど、降る雪が千重に積もっているので私は立ち去りかねるという家持の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞ここに諸人、酒酣に夜更け鷄鳴く。此に因りて主人内藏伊美吉繩麻呂の作れる歌一首・守大伴宿禰家持の和ふる歌一首
現代語訳
〔4233〕羽ばたいて鶏は鳴いても、これほど降り敷いている雪の中を、あなたはお帰りになれましょうか。
〔4234〕鳴く鶏はしきりに鳴くけれど、降る雪が千重に積もっているので、私は立ち去りかねることだ。
意訳
宴が夜明けまで続き、鶏が鳴いて客が帰る刻限になったが、主人は大雪を理由に客を引き留め、家持もそれに応じて帰りかねると答えた、和やかな贈答である。
語釈・文法注
文法・本文
- 羽振き
- 「はぶき」。羽ばたいて。
- いまさめやも
- お帰りになれようか。
- 彌頻き
- 「いやしき」。いよいよしきりに。
- 立ち難ね
- 「たちかてね」。立ち去りかねる。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十九・部立なし・4233〜4234番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平勝宝3年正月3日、越中介内蔵縄麻呂の館の宴の歌。
修辞
- 贈答
- 4234番が4233番の「鷄」「雪」を受けて答える。
解説
宴が夜を徹して続いたことがわかる。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、695頁(コマ140)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、820頁(コマ174)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日