古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4231番

瞿麥は 秋咲くものを

久米広縄(くめのひろつな)

天平勝宝3年正月3日の内蔵縄麻呂の館の宴で、雪を積んで重なり立つ岩をかたどり、巧みに草木の花を彩って作ったのを見て、久米広縄が詠んだ歌。なでしこは秋に咲くものなのに、あなたの家の雪の岩に咲いていることだという歌。

雪で作った岩山に、彩られたなでしこの花

題詞時に雪を積みて、重巖の起てるを彫り成し、奇巧草樹の花を綵り發く。此に屬きて掾久米朝臣廣繩の作れる歌一首

  1. 1瞿麥なでしこ瞿麥なでしこなでしこははは奈泥之故波
  2. 2秋あき秋あきあき咲さ咲ささくくくものものものををを秋咲物乎
  3. 3君きみ君きみきみががが家いへ家いへいえののの君宅之
  4. 4雪ゆき雪ゆきゆきののの巖いはほ巖いはほいわおににに雪巖爾
  5. 5咲さ咲ささけけけりりりけるけるけるかもかもかも左家理家流可母

引用の仕方

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現代語訳

なでしこは秋に咲くものなのに、あなたの家の雪の岩に咲いていることだ。

意訳

雪で作った岩山に造花のなでしこを飾った趣向を、季節外れに咲いたなでしことして驚き讃えた歌である。

語釈・文法注

文法・本文

重巖
重なり立つ岩。
巖
「いはほ」。大きな岩。

和歌

作者
久米広縄(生没年未詳(八世紀中頃))
越中掾として国守の大伴家持に仕え、大伴池主のあとを受けて家持と歌を交わした。巻十八・十九に歌が多い。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4231番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝3年正月3日、越中介内蔵縄麻呂の館の宴で、掾久米広縄が詠んだ歌。

修辞

見立て
造花を実際に咲いた花として詠む。

解説

雪で岩山を作り造花を飾る、宴の趣向がうかがえる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、695頁(コマ140)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、820頁(コマ174)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日