古典ライブラリー

万葉集 巻第十八 4132〜4133番

竪樣にも 彼にも横樣も

大伴池主(おおとものいけぬし)

天平勝宝元年12月15日、越前国掾大伴池主が、ふたたび漢文の書簡に添えて越中の家持に贈った戯れの歌二首。縦にも横にも、私はあなたの家の戸の外に仕える奴であったという歌、針袋はいただいた、今度はすり袋がほしい、それを持って老人ぶってみようという歌。

越前の国府で、月明かりの下で家持からの便りを読む池主

題詞更に來贈れる歌二首

  1. 1竪樣たたさ竪樣たたさたたさにににももも多々佐爾毛4132
  2. 2彼か彼かかにににももも横樣よこさ横樣よこさよこさももも可爾母與己佐母
  3. 3奴やつこ奴やつこやつことととぞぞぞ夜都故等曾
  4. 4吾あれ吾あれあれはははありありありけるけるける安禮波安利家流
  5. 5主ぬし主ぬしぬしののの戶と戶ととののの外と外ととににに奴之能等能度爾
  6. 6針はり針はりはり袋ぶくろ袋ぶくろぶくろ波里夫久路4133
  7. 7これこれこれははは賜たば賜たばたばりりりぬぬぬ己禮波多婆利奴
  8. 8すりすりすり袋ぶくろ袋ぶくろぶくろ須理夫久路
  9. 9今いま今いまいまははは得え得ええてててしかしかしか伊麻波衣天之可
  10. 10翁おきな翁おきなおきなさびさびさびせせせむむん於吉奈佐備勢牟

引用の仕方

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現代語訳

〔4132〕縦にも、あちらにも横にも、私は奴としてお仕えしていたのだ。ご主人の家の戸の外に。

〔4133〕針袋はいただきました。今度はすり袋がほしいものです。それで老人らしく振る舞いましょう。

意訳

先の戯れの訴状が真に受けられたかと案じた池主が、ふたたび書簡を送り、自分は家持の家の戸外に仕える奴のような身であると謙り、さらに針袋の次はすり袋をねだって、老人ぶってみようと戯れた歌である。

語釈・文法注

文法・本文

竪樣
「たたさ」。縦に。
横樣
「よこさ」。横に。
奴
「やつこ」。召し使い。
すり袋
物を入れて腰に下げる袋か。
得てしか
手に入れたい。
翁さび
老人らしく振る舞うこと。

和歌

作者
大伴池主(生没年未詳(八世紀中頃))
越中掾として国守の大伴家持に仕え、漢文の書簡と歌をさかんに贈り交わした。のち越前掾。天平宝字元年(757)の橘奈良麻呂の変にかかわり、その後の消息は伝わらない。
出典
『万葉集』巻第十八・部立なし・4132〜4133番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝元年12月15日、越前国掾大伴池主が越中守大伴家持に贈った歌。

修辞

諧謔
針袋の贈答をめぐる戯れを続ける。

解説

書簡にある「不伎の使君」は、家持を戯れて呼んだもの。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、666頁(コマ126)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、787頁(コマ157)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日