古典ライブラリー

万葉集 巻第十六 3858〜3859番

この頃の 吾が戀力

作者未詳

恋の苦労を役人の功績にたとえた戯れの歌二首。このごろの私の恋の労力を記録して功績として申請したら、五位の冠がもらえるほどだという歌と、このごろの私の恋の労力をお認めくださらないなら、京職に出て訴えようという歌。

役所の前で、男が功績を書いた書類を手にしている

題詞(右の歌二首)

  1. 1此こ此ここののの頃ころ頃ころころののの比來之3858
  2. 2吾あ吾ああががが戀こひ戀こひこい力ぢから力ぢからじから吾戀力
  3. 3記しる記しるしるししし集つ集つつめめめ記集
  4. 4功くう功くうくうににに申まを申まをもうさささばばば功爾申者
  5. 5五位ごゐ五位ごゐごいののの冠かがふり冠かがふりかがふり五位乃冠
  6. 6此こ此ここののの頃ころ頃ころころののの頃者之3859
  7. 7吾あ吾ああががが戀こひ戀こひこい力ぢから力ぢからじから吾戀力
  8. 8給たば給たばたばらららずずずははは不給者
  9. 9京兆みさとづかさ京兆みさとづかさみさとずかさににに京兆爾
  10. 10出い出いいでででててて訴うた訴うたうたへへえむむん出而將訴

引用の仕方

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現代語訳

〔3858〕このごろの私の恋の労力を書き集めて、功績として申請したならば、五位の冠ほどにもなるだろう。

〔3859〕このごろの私の恋の労力を、お認めくださらないのなら、京職に出て訴えよう。

意訳

恋のために費やした苦労を、官人の勤務評定にたとえておどけた歌である。恋の労力を功績として申請すれば五位に叙せられるほどだと言い、認められないなら京職に訴え出ようと詠む。

語釈・文法注

文法・本文

戀力
「こひぢから」。恋のための労力。
功
「くう」。功績。
五位の冠
五位の位階。貴族の仲間入りをする位。
京兆
「みさとづかさ」。京職、都の役所。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十六・雑歌・3858〜3859番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
作者未詳の戯れの歌。

修辞

見立て
恋の苦労を官人の功績に見立てる。

解説

律令制の官僚制度を背景にした、機知に富んだ戯れの歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、597頁(コマ91)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、699頁(コマ113)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日