古典ライブラリー

万葉集 巻第十六 3848番

新墾田の 鹿猪田の稻を

忌部黒麻呂(いんべのくろまろ)

忌部黒麻呂が夢の中で作り、目覚めてから友に口ずさませたという恋の歌。新しく開いた田の、鹿や猪の荒らす田の稲を倉に収めて、ああ干からびさせてしまったように、私の恋も干からびてしまったという歌。

山あいの新しい田で、稲が刈り取られて倉に運ばれていく

題詞夢の裏に作れる歌一首

  1. 1新あら新あらあら墾き墾きき田だ田だだののの荒城田乃
  2. 2鹿猪しし鹿猪しししし田だ田だだののの稻いね稻いねいねををを子師田乃稻乎
  3. 3倉くら倉くらくらににに藏こ藏ここめめめててて倉爾擧藏而
  4. 4あなあなあなひねひねひねひねひねひねししし阿奈干稻干稻志
  5. 5吾あ吾ああががが戀こ戀ここふふうらくらくらくははは吾戀良久者

引用の仕方

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現代語訳

新しく開墾した田の、鹿や猪の荒らす田の稲を倉に収めて、ああ干からびて古くなってしまったようだ、私が恋い慕うことは。

意訳

苦労して育てた稲を倉にしまいこんだまま古くしてしまうように、長い間胸にしまってきた自分の恋も干からびてしまったと嘆く歌で、夢の中で作ったと伝えられる。

語釈・文法注

文法・本文

新墾田
「あらきだ」。新しく開墾した田。
鹿猪田
「ししだ」。鹿や猪が荒らす田。
ひねひねし
古くなって干からびているさま。白文は「干稻干稻志」と書く。

和歌

作者
忌部黒麻呂(生没年未詳)
奈良時代の官人。
出典
『万葉集』巻第十六・雑歌・3848番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
忌部黒麻呂が夢の中で作ったと伝える恋の歌。

修辞

序詞
「新墾田の鹿猪田の稻を倉に藏めて」が「ひねひねし」を導く。
用字
「干稻干稻」の戯書。

解説

忌部黒麻呂は巻第六・第八にも歌がある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、595頁(コマ90)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、697頁(コマ112)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日