万葉集 巻第十六 3842〜3843番
小兒ども 草はな苅りそ
3841番の別伝として、平群朝臣と穂積朝臣があざけり合った歌。子どもたちよ、草は刈るな、八穂蓼を穂積の朝臣のわきくさを刈れという平群朝臣の歌と、どこから朱を掘るのか、薦を重ねるような平群の朝臣の鼻の上を掘れという穂積朝臣の返しの歌。
場面イラスト(準備中)
題詞或は云ふ、平群朝臣の嗤歌一首/穗積朝臣の和ふる歌一首
現代語訳
〔3842〕子どもたちよ、草は刈ってはいけない。八穂蓼のような穂積の朝臣の、わきの下の草を刈れ。
〔3843〕どこにあるのか、朱を掘る岡は。(薦畳)平群の朝臣の鼻の上を掘れ。
意訳
3840・3841番と同じ形の嗤笑の応酬の別伝である。平群朝臣は、穂積朝臣のわきの毛を草にたとえて刈れとからかい、穂積朝臣は、平群朝臣の赤い鼻を掘れば朱が取れるとやり返す。
語釈・文法注
文法・本文
- 小兒ども
- 「わらはども」。子どもたち。
- 八穗蓼
- 「やほたで」。穂の多い蓼。「穂積」を導く。
- 腋草
- 「わきくさ」。わきの下の毛。
- 薦疊
- 「こもだたみ」。「平群」にかかる枕詞。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十六・雑歌・3842〜3843番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 平群朝臣と穂積朝臣のあざけり合いの歌。
修辞
- 嗤笑
- 互いの容貌をからかう。
解説
3841番と3843番は下の句がほぼ同じで、同じ戯れ歌が人を替えて伝えられたものと考えられる。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、594頁(コマ90)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、696頁(コマ112)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日