古典ライブラリー

万葉集 巻第十六 3836番

奈良山の 兒手柏の

消奈行文(せなのゆきふみ)

博士消奈行文が、へつらう人をそしって詠んだ歌。奈良山の児手柏の葉の表と裏のように、どちらにもよい顔をするへつらい者の仲間よという歌。

奈良山の児手柏の葉が、表と裏を見せて揺れている

題詞佞人を謗る歌一首

  1. 1奈良なら奈良ならなら山やま山やまやまののの奈良山乃
  2. 2兒手柏このてがしは兒手柏このてがしはこのてがしわののの兒手柏之
  3. 3兩面ふたおも兩面ふたおもふたおもににに兩面爾
  4. 4左か左かかにににももも右かく右かくかくにににももも左毛右毛
  5. 5佞人ねぢけびと佞人ねぢけびとねじけびとののの徒とも徒ともとも佞人之友

引用の仕方

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現代語訳

奈良山の児手柏の葉が表裏ふたつの面を持つように、あちらにもこちらにもよい顔をする、へつらい者の仲間であることよ。

意訳

葉の表と裏の区別がつきにくい児手柏にたとえて、誰にでも調子を合わせるへつらい者をそしった歌である。

語釈・文法注

文法・本文

兒手柏
「このてがしは」。ひのき科の木。葉の表裏が似ている。
左にも右にも
「かにもかくにも」。ああもこうも。
佞人
「ねぢけびと」。へつらう人。

和歌

作者
消奈行文(生没年未詳(八世紀前半))
高句麗から渡来した人々の子孫で、大学助などを務めた学者。『懐風藻』にも詩が載る。巻十六に、人をあざける戯れの歌を残す。
出典
『万葉集』巻第十六・雑歌・3836番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
博士消奈行文(せなのゆきふみ)が、へつらう人をそしって詠んだ歌。

修辞

譬喩
児手柏の葉に二心の者をたとえる。

解説

消奈行文は高句麗系の渡来人の子孫で、大学の博士を務めた。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、592頁(コマ89)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、695頁(コマ111)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日