古典ライブラリー

万葉集 巻第十六 3819〜3820番

夕立の 雨うち零れば

小鯛王(おだいのおおきみ)

小鯛王が宴で琴を取る時、必ずまず吟詠したという歌二首。夕立の雨が降ると春日野の尾花の先の白露が思われるという歌と、夕日のさす川辺に建てた家の形がよいので、なるほど人が寄り集まったという歌。

夕日のさす川辺に、形のよい家が建っている

題詞(小鯛王の歌二首)

  1. 1夕ゆふ夕ゆふゆう立だち立だちだちののの暮立之3819
  2. 2雨あめ雨あめあめうちうちうち零ふ零ふふれれればばば雨打零者
  3. 3春日かすが春日かすがかすが野の野ののののの春日野之
  4. 4草花をばな草花をばなおばなががが末うれ末うれうれののの草花之末乃
  5. 5白しら白しらしら露つゆ露つゆつゆおもほゆおもほゆおもほゆ白露於母保遊
  6. 6夕ゆふ夕ゆふゆうづくづくずく日ひ日ひひ夕附日3820
  7. 7さすさすさすややや河かは河かはかわ邊べ邊べべににに指哉河邊爾
  8. 8構つく構つくつくるるる屋や屋ややののの構屋之
  9. 9形かた形かたかたををを宜よろ宜よろよろしみしみしみ形乎宜美
  10. 10諾うべ諾うべうべよそりよそりよそりけりけりけり諾所因來

引用の仕方

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現代語訳

〔3819〕夕立の雨が降ると、春日野の尾花の穂先の白露が思われる。

〔3820〕夕日のさす川辺に建てた家の形がよいので、なるほど人が寄り集まって来たことだ。

意訳

小鯛王(置始多久美)が宴で琴を取る時、必ずまず吟詠したという歌二首である。夕立に春日野の尾花の白露を思う歌と、夕日のさす川辺の家の形のよさに人が寄り集まるという歌で、いずれも琴歌として歌われた。

語釈・文法注

文法・本文

草花
「をばな」。尾花、すすきの穂。
末
「うれ」。穂先。
構る屋
「つくるや」。建てた家。
諾
「うべ」。なるほど。
よそりけり
寄り集まったことだ。

和歌

作者
小鯛王(生没年未詳)
巻十六に、宴の席で琴を取ってまず誦したという歌二首を残す。左注に置始多久美という人物と同じとも記す。
出典
『万葉集』巻第十六・雑歌・3819〜3820番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
小鯛王が宴で琴を取る時、まず吟詠した歌。

修辞

情景
夕立や夕日の情景を描く。

解説

3817〜3820番は、宴で琴に合わせて歌われた歌謡で、作者の創作ではなく古歌を口ずさんだものと考えられる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、589頁(コマ87)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、691頁(コマ109)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日