万葉集 巻第十六 3817〜3818番
柄臼は 田廬のもとに
河村王が宴で琴を弾く時、まず口ずさんだという歌二首。柄臼は田小屋のもとに、私の兄子はにこにこ笑って立っているのが見えるという歌と、朝霞のかかる鹿火屋の下で鳴く河鹿のように、慕っていると告げてくれる子がいればよいという歌。
場面イラスト(準備中)
題詞(河村王の歌二首)
現代語訳
〔3817〕唐臼は田の小屋のもとにあって、わが兄子はにこにこと笑って立っていらっしゃるのが見える。
〔3818〕朝霞のかかる鹿火屋の下で鳴く河鹿のように、ひそかに慕っていると告げてくれる子がいればよいのに。
意訳
河村王が宴で琴を弾く時、いつもまず口ずさんだという民謡風の歌二首である。田の小屋のそばでにこにこ笑う若者の姿を描く歌と、鹿火屋の下で鳴く河鹿のように慕っていると告げてくれる娘がほしいという歌で、琴に合わせて歌われた。
語釈・文法注
文法・本文
- 柄臼
- 「からうす」。足で踏む臼、唐臼。
- 田廬
- 「たぶせ」。田の番小屋。
- 莞爾に
- 「にふぶに」。にこにこと。
- 香火屋
- 「かひや」。鹿や猪を追うために火をたく小屋。
- 蝦
- 「かはづ」。河鹿。
和歌
- 作者
- 河村王(生没年未詳)
伝未詳。巻十六に、宴の席で琴を弾く前にまず誦したという歌二首を残す。 - 出典
- 『万葉集』巻第十六・雑歌・3817〜3818番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 河村王が宴で琴を弾く時、まず口ずさんだ歌。
修辞
- 序詞
- 3818番の「朝霞香火屋が下に鳴く蝦」が「しぬび」を導く。
解説
宴で琴を弾く前に歌う決まりの歌であり、古い民謡が宮廷の宴に取り入れられていたことを示す。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、589頁(コマ87)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、691頁(コマ109)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日