古典ライブラリー

万葉集 巻第十六 3816番

家にありし 櫃に鏁刺し

穂積親王(ほづみのみこ)

穂積親王が宴の酒たけなわの時に好んで口ずさんだ歌。家の櫃に錠をさしてしまいこんでおいた恋の奴が、つかみかかってきてという戯れの歌。

宴の席で、親王が杯を手に歌を口ずさんでいる

題詞穗積親王の御謌一首

  1. 1家いへ家いへいえにににありありありししし家爾有之
  2. 2櫃ひつ櫃ひつひつににに鏁ざう鏁ざうぞう刺さ刺ささししし櫃爾鏁刺
  3. 3藏をさ藏をさおさめめめてててししし藏而師
  4. 4戀こひ戀こひこいののの奴やつこ奴やつこやつこののの戀乃奴之
  5. 5つかみつかみつかみかかりかかりかかりててて束見懸而

引用の仕方

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現代語訳

家にあった櫃に錠をさして、しまいこんでおいた恋の奴が、つかみかかってきて。

意訳

穂積親王が酒宴で好んで口ずさんだという歌である。恋を、櫃に閉じ込めておいたのに飛び出してつかみかかってくる奴(しもべ)にたとえ、抑えきれない恋心をおどけて詠む。

語釈・文法注

文法・本文

鏁
「ざう」。錠。
藏めてし
「をさめてし」。しまいこんでおいた。
戀の奴
「こひのやつこ」。恋を奴(しもべ)にたとえた語。

和歌

作者
穂積親王(?–715)
天武天皇の皇子。知太政官事を務めた。異母妹の但馬皇女との恋の歌で知られ、晩年には大伴坂上郎女を妻とした。
出典
『万葉集』巻第十六・雑歌・3816番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
状況
穂積親王が酒宴で好んで口ずさんだ歌。

修辞

擬人
恋を奴にたとえる。

解説

穂積親王は天武天皇の皇子で、但馬皇女との恋(巻第二)でも知られる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、589頁(コマ87)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、691頁(コマ109)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日