万葉集 巻第十五 3638〜3639番
これやこの 名に負ふ鳴門の
大島の鳴門を過ぎて二晩たった後に詠んだ歌二首。これがあの名高い鳴門の渦潮で玉藻を刈るという海人少女たちかという田辺秋庭の歌と、波の上で船寝をした夜、どう思ってか妻がいとしく夢に見えたという歌。
場面イラスト(準備中)
題詞大島の鳴門を過ぎて再宿を經たる後、追ひて作れる歌二首
現代語訳
〔3638〕これがあの、名に聞く鳴門の渦潮で玉藻を刈るという海人の少女たちなのか。
〔3639〕波の上で浮き寝をした夜、どう思ってか、心にいとしく、妻が夢に見えたことだ。
意訳
周防の大島の鳴門(大畠瀬戸)を過ぎた後に、そこを振り返って詠んだ歌である。名高い鳴門の渦潮で玉藻を刈る海人少女を見た驚きと、船寝の夜に妻が夢に現れたいとしさを詠む。
語釈・文法注
文法・本文
- これやこの
- これがあの。
- 名に負ふ
- 名高い。
- 鳴門
- 「なると」。周防の大島と本土の間の瀬戸。
- 何ど思へか
- どう思ってか。相手が自分を思うので夢に見えるという考え。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十五・部立なし・3638〜3639番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 遣新羅使人が周防の大島の鳴門を過ぎて二晩たった後に詠んだ歌。3638番は田辺秋庭の作。
修辞
- 感動
- 「これやこの」と驚きを表す。
解説
大島の鳴門は今の山口県柳井市と周防大島の間の大畠瀬戸で、潮流の速さで知られる。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、560頁(コマ73)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、655頁(コマ91)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日