古典ライブラリー

万葉集 巻第十五 3617番

石走る 瀧もとどろに

大石蓑麻呂(おおいしのみのまろ)

安芸国の長門島で船を磯辺に泊めて作った歌五首の第一首。岩を走る滝もとどろくばかりに鳴く蟬の声を聞くと、都が思われるという大石蓑麻呂の歌。

長門島の滝のほとりで、蟬がしきりに鳴いている

題詞安藝國長門島にて船を磯邊に泊てて作れる歌五首

  1. 1石いは石いはいわ走ばし走ばしばしるるる伊波婆之流
  2. 2瀧たき瀧たきたきもとどろもとどろもとどろににに多伎毛登杼呂爾
  3. 3鳴な鳴ななくくく蟬せみ蟬せみせみののの鳴蟬乃
  4. 4聲こゑ聲こゑこえをををししし聞き聞ききけけけばばば許惠乎之伎氣婆
  5. 5京都みやこ京都みやこみやこししし思おも思おもおもほほおゆゆゆ京師之於毛保由

引用の仕方

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現代語訳

岩の上を走り流れる滝もとどろくばかりに鳴く蟬の声を聞くと、都が思われることだ。

意訳

安芸の長門島で、滝の音にも負けずに鳴く蟬の声を聞いて、都を恋しく思う歌である。

語釈・文法注

文法・本文

石走る
「いははしる」。岩の上を走り流れる。
もとどろに
とどろくばかりに。
京都
「みやこ」。白文は「京師」と書く。

和歌

作者
大石蓑麻呂(生没年未詳(八世紀前半))
天平八年(736)の遣新羅使の一行の一人。巻十五の遣新羅使の歌群に歌がある。
出典
『万葉集』巻第十五・部立なし・3617番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
遣新羅使人の一人、大石蓑麻呂の歌。安芸国の長門島(今の広島県呉市の倉橋島)で詠んだ。

修辞

聴覚
滝と蟬の声の響きを重ねる。

解説

長門島は今の倉橋島で、遣新羅使の造船地としても知られる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、557頁(コマ71)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、650頁(コマ89)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日